研究課題/領域番号 |
26440129
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
丸山 千秋 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 副参事研究員 (00281626)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 大脳皮質 / サブプレート / 脳発生 / 神経細胞移動 / 脳進化 / 多極性移動 / ロコモーション / タイムラプスイメージング |
研究実績の概要 |
哺乳類の大脳新皮質は、他の動物種の脳には見られない独自の6層構造をとり、これはより多くのニューロンを整然と並べ、複雑な神経回路の形成、進化にとって重要な構造的基盤であると考えられる。この大脳新皮質が胎生期に形成される際、分化した興奮生ニューロンは脳室帯から脳表に向かって放射状に移動し、先に移動したニューロンを追い越して上に新たな層を形成する。この放射状移動の制御に関与する遺伝子には様々なものが報告されており、それらのノックアウトやノックダウンにより放射状移動が障害されるが、その多くはサブプレート層の直下で停滞する表現型を示す。このことから本研究では、サブプレート(SP)層の放射状移動における役割に着目した。SPニューロンは大脳新皮質で最初期に分化、成熟するニューロンで、脳形成終了後はアポトーシスにより消失する一過的なニューロンである。これまでその機能として、視床-皮質間の神経回路形成に重要であることは報告されていたが、本研究により放射状移動制御におけるSPニューロンの新たな機能を解明した。すなわち、SPニューロンは胎生中期(E15)の時点ですでに活発な神経活動をしており、この活動が放射状移動における多極性ー双極性変換過程に重要であることが明らかになった。さらにSPニューロンは神経突起を脳室帯側に盛んに伸ばしながら多極性移動中の細胞にグルタミン酸シグナルを送っていることを示唆する結果を得た。電顕観察によりこのシグナルは一過的なシナプス様のコンタクトであることもわかった。 SP層は哺乳類独自のニューロン層であるため、祖先型の羊膜類から哺乳類脳への進化の過程で、SP層の形成、及びSPニューロンと移動多極性細胞の相互作用が、より早く効率的にニューロンが移動できるロコモーションモードの獲得に貢献した可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サブプレートニューロンの新規の機能について、ライブイメージングや電顕観察により解明が進み、論文投稿準備をしている段階であるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、論文執筆過程で気づいた補足実験を完了する。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文執筆中は実験を行わないため、試薬等の消耗品購入が当初の予定より少なく済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
論文投稿費、及び論文をまとめるための最終実験を行うための試薬代、9月にデンマークで行われる国際学会の参加費、旅費に使用する予定。
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備考 |
東京都医学総合研究所・神経回路形成プロジェクトホームページ http://www.igakuken.or.jp/regeneration/service.html
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