研究課題/領域番号 |
26440131
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
伊藤 光二 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50302526)
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研究分担者 |
岩城 光宏 国立理化学研究所, 生命システム研究センター, 上級研究員 (30432503)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ミオシン / アクチン / シロイヌナズナ / 原形質流動 |
研究実績の概要 |
シロイヌナズナにはクラスXIミオシンが13遺伝子,クラスVIIIミオシンが4遺伝子,合計17遺伝子のミオシンが発現している。これらのミオシンは細胞内で原形質流動,小胞,オルガネラの輸送,構造維持,張力発生などをとおして細胞成長,個体成長に重要な機能をはたしていると考えられている。しかし,どのミオシンが,どの機能に,どのような機構で関わっているのか,その分子機構についてはほとんどわかっていない。その大きな要因はシロイヌナズナミオシンのタンパク質レベルの解析データが圧倒的に不足していることによる。 当該年度においては,シロイヌナズナの17種類のミオシンのうち,系統樹から特に離れたミオシンXI-Iに重点をおいて詳細な解析をした。XI-Iは他のクラスXIミオシンと違い,速度が非常に遅く,またアクチン活性化ATP分解活性も低かった。一方,アクチンとの親和性が高かった。XI-Iは核膜に存在するという報告があったが,それ以外に細胞質のアクチン繊維上に存在することがわかった。GFP-XI-Iを用いて,培養細胞およびプロトプラストでの運動を観察したところ,非常に遅い速度で運動していることがわかった。 XI-Iは,核膜の張力発生以外に,遅いオルガネラ運動および,種々のオルガネラ運動においてアクチン繊維との結合を助けていることが示唆された。XI-Iの結果は4月上旬現在,論文に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シロイヌナズナにはクラスXIが13種類,クラスVIIIが4種類,合計17種類のミオシンが存在する。植物は個体レベルでみると動物よりもはるかに動きが少ないが,細胞レベルでの動態は,むしろ動物よりもダイナミックであるので,これほど多くの種類のミオシンが必要になるのだと考えられる。藻類を使った一連の研究によって,クラスXIミオシンの細胞内生理機能の1つは原形質流動の駆動であることがわかっている。シロイヌナズナには13種類のクラスXIミオシン遺伝子が存在するが,すべての生理的機能は原形質流動だけであろうか?それとも他の生理的機能があるのだろうか?また,4種類のクラスVIIIミオシンの機能は何であろうか?これらの解答を得るために,これまで多くの研究者により遺伝子ノックアウトによる遺伝学的手法がとられてきた。しかし,シロイヌナズナの多くのミオシンは機能の重複(redundancy)があるため,複数のミオシン遺伝子を同時に遺伝子破壊しなければ顕著な表現型が出ない。そのため遺伝学的手法からの情報に依存している現状においては,シロイヌナズナのほとんどのミオシンの生理的な役割, 機能について明確な解答が得られていない。その機能解明には生化学的解析によるタンパク質レベルでの解析が大きく寄与すると考えられる。植物から生化学的測定に必用な量の天然のミオシンを直接,精製するのは非常に困難なので分子生物学的手法を用いた発現系が必用とされる。 平成27年度はこのうち,ミオシンXI-Iについて集中的に行った。そして,XI-Iは当初の予測と違い,クラスXIミオシン一般の性質と違い非常に遅く,アクチン活性化ATPaseが低いこと,アクチンとの親和性が非常に高いことがわかった。一番,難解だろうと考えられていたXI-Iの結果を明らかにすることができたの平成27年度の本プロジェクトにしめる達成度はかなり高いといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度はシロイヌナズナの17種類のミオシンについてモータードメインコンストラクトはすべて完成し,それをもちいた運動速度の測定をおこなった。平成27年度はシロイヌナズナの13種類のミオシンXIのうち,分子系統樹からもっともはなれているミオシンXI-Iについて,詳細な速度論的解析を行った。 今後は,17種類のミオシンについてモータードメインだけでなく,HMM, Full length,尾部コンストラクトも作成しする。そして全長コンストラクトにおいてアクチン活性化ATP分解活性を測定し,HMMコンストラクトと比較することにより尾部による調節機構を調べる。さらにミオシン尾部に結合する結合タンパク質をシロイヌナズナの実生の抽出液からプルダウンアッセイで単離し,質量分析により同定する。そして同定したミオシン尾部結合タンパク質が生体内でミオシンと共局在するか,どうかをコンフォーカル蛍光顕微鏡により検証する。また,HMMを使用し,全反射照明蛍光顕微鏡による1分子イメージングによって,個々のミオシンのプロセッシビティ(運動の連続性)と運動方向を調べる。
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