研究課題/領域番号 |
26440137
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉岡 泰 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60202397)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 色素体 / 葉緑体 / 細胞増殖 / 細胞分化 / 葉緑体分裂 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はシロイヌナズナのCRLタンパク質の機能解明を通じて、細胞分化・増殖に関与する色素体機能の解明を目指すことである。このためにcrl変異体のエンハンサー、サプレッサー変異のスクリーニング、CRLタンパク質と相互作用するタンパク質の同定、色素体を持たない細胞の細胞周期の解析を昨年度に引き続きおこなった。その結果、crlのサプレッサー変異体を数個得ることができた。得られたサプレッサー変異体の一部について個体成長,葉緑体分裂などの表現型を調べた結果、これらの変異体ではcrl変異体が多面的な表現型がすべて回復していた。現在さらにサプレッサー変異、エンハンサー変異の候補遺伝子を得るためにスクリーニングを継続するとともに、サプレッサー変異については原因遺伝子の同定を進めている。昨年度までに同定したCRLと相互作用しているタンパク質候補の内、2種類については試験管内において転写、翻訳したタンパク質を用いて、CRLタンパク質との相互作用を確認した。また、一方のタンパク質については過剰発現する事によって、crl変異体の表現型が部分的に回復する事を明らかとした。もう一方のタンパク質の過剰発現するcrl変異体の作成を行い、表現型の解析を始めている。ヒメツリガゴケのCRL相同遺伝子PpCRL破壊株を用いて、葉緑体分裂過程を継時的に観察できる実験系を確立した。ヒメツリガゴケで確立した系などを用いて、葉緑体を持たない細胞が生じる過程および、PpCRL破壊株における葉緑体増殖過程を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究計画では、crl変異体のエンハンサー、サプレッサー変異の同定まで至る予定であったが、変異の原因遺伝子の同定には至らなかった。その理由は予想よりも多数のサプレッサー変異系統を単離し、それらの戻し交配に時間をとられたことが計画通りに進行しなかった主な原因である。しかし、戻し交配は順調に進んでおり、平成28年度の始めには原因遺伝子を絞り込む事ができると考えている。CRLと相互作用するタンパク質を2種類同定することができ、それらのタンパク質の機能を通じて、CRLタンパク質がどのようにして植物の成長と葉緑体分裂とに関与するのかという作業仮説を立てる事ができた。今後は作業仮説にそった解析を進めることによって、細胞分化、増殖に関与する色素体機能を解明できるのではないかと期待される。色素体を持たない細胞の細胞周期の解析は、ヒメツリガゴケのPpCRL破壊系統を用いる事に計画を一部変更したが、解析に用いる実験系を立ち上げる事ができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度には、サプレッサー変異遺伝子の同定に重点を置く。これらの遺伝子の同定によって植物の発生、成長、分化にどのような色素体機能が関与するのかを解明する重要な手がかりが得られると期待している。また、CRLと相互作用するタンパク質を通じたCRLタンパク質の機能解明に関しては、相互作用タンパク質遺伝子の過剰発現、遺伝子変異など用いた遺伝学的解析を行い、CRLとこれらタンパク質との関係を明らかにする。色素体を持たない細胞の細胞周期の解析は、ヒメツリガネゴケのCRL相同遺伝子破壊株を用いて解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年初めに壊れた植物栽培装置を購入するために、平成27年度の研究費の一部を平成28年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
植物栽培装置は平成27年度4月にすでに納入済みであり、繰り込み分はすべて使用した。
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