研究課題/領域番号 |
26440140
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高橋 宏二 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40283379)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | オーキシン / 胚軸伸長 / H+-ATPase / ABP1 |
研究実績の概要 |
植物ホルモンの一種であるオーキシンの代表的な作用は植物組織の伸長誘導である。申請者らは、これまでにオーキシンはオーキシン受容体TIR1/AFBsの関与なしに細胞膜H+-ATPaseをリン酸化して活性化し、伸長生長を誘起することを報告した。本申請課題では、オーキシン酸成長の分子メカニズムと新規のオーキシンシグナル伝達機構を明らかにすることを目的として、オーキシン誘導性胚軸伸長とH+-ATPaseリン酸化を指標とした変異体スクリーニングを行うとともにAuxin Binding Protein 1(ABP1)の機能解析を行っている。本年度はまずオーキシン誘導性胚軸伸長に異常をきたしている変異体のスクリーニングを行った。内生オーキシン量を減少させた変異原処理株の黄化芽生え植物にオーキシンを投与して胚軸伸長誘導を測定したところ、これまでスクリーニングした約9,000株から野生株と比べてオーキシン誘導性胚軸伸長が低下した株が28株得られた(本申請課題実施前からの研究を含める)。さらに、二次スクリーニングとしてオーキシン誘導性のH+-ATPaseリン酸化に異常を示す変異体候補株を4株選抜した。現在、一次スクリーニングを継続的に実施しておりさらなる変異体候補株の単離を試みている。また、すでに得られた変異体候補株の原因遺伝子の特定と機能を行っているところである。一方、ABP1の機能解析については、組換えABP1タンパク質の作出と抗体の作製を行った。現在、ABP1のオーキシン結合活性の測定に向けて条件検討を含めて準備を行っているところである。現在は研究計画の途中段階ではあるが、変異体スクリーニングによる網羅的な解析とABP1に注目した解析を統合して、新規オーキシンシグナル伝達機構の解明に近づいていると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画として、 (A)オーキシン誘導性胚軸伸長の初期過程を攪乱する変異体スクリーニングと(B) Auxin Binding Protein 1 (ABP1) のアミノ酸変異とオーキシン結合活性との関連性の解析を立案していた。本年度、(A)については約6,772株の変異原処理株を一次スクリーニングして、オーキシン誘導性のH+-ATPaseリン酸化が低下した株を1株選抜した(以前からの研究と合わせて4株)。一次スクリーニングは継続中であるが、現在のところ計画通りに研究は進行している。(B)については、組換えABP1タンパク質を作出し、抗体の作製を行った。研究計画では等温滴定型カロリメーターや分子間相互作用解析装置を用いて組換えABP1タンパク質のオーキシン結合活性を測定することにしている。これまで、組換えABP1タンパク質と分子間相互作用解析装置を用いた活性測定を行ったが、現在のところ成功していない。組換えABP1タンパク質に結合活性が保持されているか、分子間相互作用解析装置では測定限界以下であるため測定が困難である可能性もあるため、測定方法を検討しているところである。従って、(B)については達成度はやや満足するところまで到達していないかもしれない。(A)と(B)の遂行状況を総合的に判断して「おおむね順調に進展している。」とした。
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今後の研究の推進方策 |
本申請課題を推進するにあたり、まずは当初の研究計画通りに実施する予定である。変異体スクリーニングは継続して行い、原因遺伝子の同定とオーキシンシグナル伝達機構との関わりに焦点をあてて研究を遂行する。ABP1の機能解析については、分子間相互作用解析装置を用いた組換えABP1タンパク質のオーキシン活性測定が今のところ成功していないため、今後は別のタンパク質発現系を用いて組換えABP1タンパク質を作出する試みと等温滴定型カロリメーター(MicroCal iTC200)を用いた結合活性測定の試みを組み合わせて対応していく予定である。また、最近、ABP1のノックアウト変異体を用いた機能解析の報告がなされた(Gao et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 112: 2275-2280, 2015年)。そこで、本報告で使われたノックアウト株を入手して、オーキシン誘導性胚軸伸長とH+-ATPaseリン酸化を野生株と比較する予定である。
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