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植物ホルモンの一種であるオーキシンの代表的な作用は植物組織の伸長誘導である。申請者らは、本申請研究の交付申請書を作成するまでに、オーキシンは細胞膜プロトンポンプ（H+-ATPase）をリン酸化して活性化し、いわゆる酸成長過程を経て伸長生長を誘起することを見出した。また、この過程にはオーキシン受容体TIR1/AFBsが関与していない可能性を示した。本申請研究では、別の受容体候補としてAuxin-Binding Protein1（ABP1）の関与について検討するとともにシグナル伝達因子を特定すべく変異体スクリーニングを実施した。まずオーキシン誘導性伸長生長におけるABP1の関与を検討する目的で新しく入手したABP1ノックアウト変異体（abp1-TD1、abp1-C1）を用いて検討したところ、細胞膜H+-ATPaseリン酸化や胚軸伸長に有意な影響は認められず、ABP1の関与の可能性は低いと推察された。一方、変異体スクリーニングではオーキシン誘導性H+-ATPaseリン酸化を著しく低下する変異体候補を数株単離することができ、現在、変異箇所の検討を進めている。また、TIR1/AFBsの関与を再検討すべく、新たに開発したアッセイシステムを用いて検討を行っているところである。本申請期間中に、オーキシンと同様に植物細胞伸長を誘導するホルモンであるブラシノステロイドが細胞膜H+-ATPaseのリン酸化を誘導することも見出した。オーキシン作用とブラシノステロイド作用のクロストークの解析を行うことと合わせ、オーキシン酸成長のシグナル伝達機構の解明に近づけると考えている。
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