本研究で作製した、シロイヌナズナのAtVLN2遺伝子と黄色蛍光蛋白質との融合遺伝子をAtVLN2欠損株に発現させたAtVLN2-YFP株の成長不全は回復せず、基部陸上植物であるゼニゴケを用いた解析を進めた。京都大学・河内孝之教授グループとの共同研究により、ゼニゴケのゲノム情報において、6つのゲルゾリンドメインおよびC末端にヘッドピースドメインを持つ典型的なビリン様遺伝子が1つ(MpVLN1)、3つのゲルゾリンドメインのみを持つ遺伝子が1つ(MpGEL1)特定された。CRISPR/Cas9法により、それぞれの遺伝子破壊株を作製した。MpVLN1破壊株の葉状体では、弱光下における葉緑体集合反応、強光下における葉緑体逃避反応が抑制されている可能性が示唆された。また、葉状体の形態が扁平化する異常も認められた。 今後、MpVLN1破壊株を用いて、以下の課題に取り組む。MpVLN1遺伝子と蛍光蛋白質との融合遺伝子を破壊株に発現させたMpVLN1可視化株を作製し、上記の表現型異常が回復するか、MpVLN1が細胞内のどこに局在するかを解析する。特定の光条件下における葉緑体のアンカー状態について、細胞膜ゴーストアッセイ法によって評価し、アクチン細胞骨格との関連を明らかにする。葉状体の形態異常について、細胞の形態、細胞分裂の活性、分裂部位の分布状態に注目して解析する。
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