研究課題
本研究は,病原菌の感染などの生物学的ストレスに対する初期応答として観察されるプリン分解の活性化の生理学的意義について,特にプリン分解が直接的あるいは間接的にその生成に関与する2種類の本質的に異なる生理活性分子,活性酸素(ROS)およびジャスモン酸(JA)の作用を足掛かりに解明することを目的とする。植物の病害抵抗性において ROS の生成は,病原菌の侵入に対し,その伸展を抑える重要な働きを担っている。シロイヌナズナにおいて,微生物の侵入に応答して ROS を生成する酵素としては,RBOHD に代表される NADPH オキシダーゼがよく知られるが,本研究では ROS を生成するプリン分解の初発酵素キサンチン脱水素酵素(XDH)の病害抵抗性への関与を調査してきた。これまで明確な結果は得られなかったため,本年度は複数の微生物を用いた病原抵抗性の特異性を中心に調査した。その結果,シロイヌナズナにおける主要なアイソフォームである AtXDH1 の遺伝子欠損や,ゲノムにコードされたもう1つの XDH (AtXDH2) を標的に含めた RNA 干渉は,シュードモナスやボトリチス,ペクトバクテリウムに対する病害抵抗性を低下させた。また,シュードモナスの接種に応答して,AtXDH1 の転写産物レベルが有意に亢進した。最近,メリーランド大学の Xiano の研究グループにより,AtXDH1 が生成する ROS がうどんこ病に対する抵抗性発現に貢献していることが示されたが,この報告を含めると,XDH は活物寄生菌と殺生菌の両方を含む少なくとも4種の異なる病原菌に対する基礎的抵抗性に関与していると考えられる。以上の結果から,XDH,特に AtXDH1 は幅広い病原性微生物に対する抵抗性に関わる新奇な病害抵抗性因子であることが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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http://www.mls.sci.hiroshima-u.ac.jp/mpb/index.php