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2015 年度 実施状況報告書

酸化シグナルによる植物細胞傷害プロセス解明:活性カルボニル種の作用とインパクト

研究課題

研究課題/領域番号 26440149
研究機関山口大学

研究代表者

真野 純一  山口大学, 大学研究推進機構, 教授 (50243100)

研究分担者 肥塚 崇男  山口大学, 農学部, 助教 (30565106)
松井 健二  山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90199729)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード酸化シグナル / 酸化ストレス / プログラム細胞死 / オキシリピン / アクロレイン / 20S プロテアソーム / グルタチオン
研究実績の概要

活性酸素の下流で生じる過酸化脂質分解産物である活性カルボニル種(RCS)が植物のプログラム細胞死(PCD)を引き起こすメカニズムを解明した。タバコBY-2培養細胞にPCDを引き起こす(致死)レベルと引き起こさない(亜致死)レベルのアクロレインを加えたときに生じる細胞内の生化学的変化を解析した。アクロレイン添加により,BY-2細胞のグルタチオン含量が急速に低下したが,この低下は致死レベル・亜致死レベルともに同程度であり,PCD開始の直接原因ではなかった。PCD開始に関与することが知られているカスパーゼ1様プロテアーゼ(C1LP),カスパーゼ3様プロテアーゼ(C3LP)の活性は,細胞にアクロレインを添加して30分以内に大きく増大した。とくに致死レベルのアクロレインによるC3LP活性の増大は亜致死レベルでの増大より有意に大きかったことから,C3LP活性がある閾値以上に達することで細胞死のプログラムが開始されることが示唆された。
培養細胞から抽出した可溶性タンパク質画分にRCSを加えるとC1LPとC3LPが活性化されたが,過酸化水素では活性化されなかったことから,細胞内で酸化ストレスの結果生じたRCSがC1LPとC3LPの活性化を引き起こしたことがわかった。
アクロレインは細胞のアスコルビン酸消費を引き起こし,結果として活性酸素レベルを増大させたが,これらの変化よりもC3LP活性化の方が早く生じたことから,RCSによるC3LPの活性化が,酸化シグナルで開始されるPCDのもっとも初期の生化学的事象であることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

酸化ストレスを与えたタバコ培養細胞で4-ヒドロキシノネナールなどのRCSが生成し,それらがプログラム細胞死(PCD)誘発能をもつこと,消去剤または消去酵素の過剰発現によってRCS増大を抑制すると酸化ストレス下でもPCDが開始しないことを示した。これらの活性酸素による植物PCDを開始する酸化シグナルの実体がRCSであることを初めて明らかにした。またRCS消去酵素2-アルケナールレダクターゼを過剰発現した組換えタバコにおいて塩ストレスおよび活性酸素による根のPCDが抑制されたことから,植物体のPCDにもRCSが関与することを立証した。このように,植物における酸化シグナルのRCSシグナルによるPCD開始の初期ターゲットとして,C3LPを特定することができた。

今後の研究の推進方策

C3LPがRCSによってどのような化学修飾を受けたときにPCD開始のスイッチがオンになるかを明らかにするために,C3LPのPBA1タンパク質上の被修飾アミノ酸を特定し,その修飾と20S プロテアソームの4種のプロテアーゼ活性の活性化との相関を明らかにする。さらに,C3LPが活性化されることでどのようなタンパク質が最初に分解されるかを解明するため,C3LPが活性化されたときのみに生じるN末端をTAILS標識し,プロテオーム解析によって同定する。これらの結果から,植物のPCDを開始させるRCSの感知とシグナル伝達機構を記述する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Reactive carbonyl species activate caspase-3-like protease to initiate programmed cell death in plants2016

    • 著者名/発表者名
      Md. Sanaullah Biswas and Jun'ichi Mano
    • 雑誌名

      Plant and Cell Physiology

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Lipid peroxide-derived short-chain carbonyls mediate hydrogen peroxide-induced and salt-induced programmed cell death in plants2015

    • 著者名/発表者名
      Md. Sanaullah Biswas and Jun'ichi Mano
    • 雑誌名

      Plant Physiology

      巻: 168 ページ: 885-898

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.1104/pp.115.256834

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Involvement of oxylipin carbonyls in the auxin-dependent lateral root formation2016

    • 著者名/発表者名
      Md. Sanaullah Biswas, Jun’ichi Mano, Hidehiro Fukaki
    • 学会等名
      第57回 日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      岩手大学上田キャンパス(岩手県盛岡市)
    • 年月日
      2016-03-18 – 2016-03-20
  • [学会発表] 酸化シグナル因子である活性カルボニル種が植物プログラム細胞死を引き起こすしくみ2016

    • 著者名/発表者名
      Md. Sanaullah Biswas, Jun’ichi Mano
    • 学会等名
      第57回 日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      岩手大学上田キャンパス(岩手県盛岡市)
    • 年月日
      2016-03-18 – 2016-03-20
  • [学会発表] Oxylipin carbonyls are involved in the auxin signalling to initiate lateral root formation2015

    • 著者名/発表者名
      Md. Sanaullah Biswas, Hidehiro Fukaki, Jun’ichi Mano
    • 学会等名
      日本植物学会第79回大会
    • 発表場所
      朱鷺メッセ(新潟県新潟市)
    • 年月日
      2015-09-06 – 2015-09-08
  • [学会発表] Oxylipin carbonyls are involved in the auxin signalling to initiate lateral root formation in Arabidopsis thaliana2015

    • 著者名/発表者名
      Md. Sanaullah Biswas, Jun'ichi Mano
    • 学会等名
      The 12th International POG Conference Reactive Oxygen and Nitrogen Species in Plants
    • 発表場所
      イタリア,Verona市
    • 年月日
      2015-06-24 – 2015-06-26
    • 国際学会
  • [学会発表] Glutathione in plant cells is constitutively consumed by acrolein, a lipid peroxide-derived highly toxic aldehyde2015

    • 著者名/発表者名
      Jun'ichi Mano, Md. Sanaullah Biswas
    • 学会等名
      The 12th International POG Conference Reactive Oxygen and Nitrogen Species in Plants
    • 発表場所
      イタリア,Verona市
    • 年月日
      2015-06-24 – 2015-06-26
    • 国際学会

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公開日: 2017-01-06  

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