研究課題
1. アクロレインを特異的に消去するグルタチオントランスフェラーゼ(GST)の発見と性質の解明。シロイヌナズナGSTアイソザイムのうち,Tau19がアクロレインを解毒消去するアイソザイムであることを見いだした。酵素学的解析から,GST Tau19は植物で従来知られていたどの酵素よりアクロレインに対するKm値が低く,アクロレイン解毒に重要な酵素であることが示唆された。2. 活性カルボニル(RCS)によるプログラム細胞死(PCD)開始機構の解明。タバコBY-2培養細胞にPCDを開始させるレベルのアクロレインを与えると,明白な細胞死が観察されるより早い段階でカスパーゼ3様プロテアーゼ(C3LP)が活性化された。同様に,細胞にPCDを開始させるレベルの過酸化水素を与えてもC3LPは活性化された。細胞から抽出したタンパク質混合液中のC3LP活性は,アクロレインまたはHNE添加により増大したが,過酸化水素では増大しなかった。すなわち,活性酸素の下流で生じたRCSによるC3LPの直接的活性化が,活性酸素によるPCD開始の初期イベントであることが明らかになった。3. アブシシン酸(ABA)による気孔閉口シグナルへのRCSの関与。孔辺細胞へのABA刺激は,活性酸素生成を誘導し,生じた活性酸素が気孔閉口シグナル伝達の一部を担う。このシグナル伝達にRCSが関与するかを検証した。タバコの表皮(孔辺細胞を含む)に気孔閉口を起こすレベルのABAを加えると,孔辺細胞で活性酸素が増大し,また細胞のRCSレベルが増大した。RCS消去酵素2-alkenal reductase (AER) を過剰発現させたタバコでは,孔辺細胞の活性酸素は増大したが,RCSレベルは増大せず,気孔閉口誘導は野生株より少なかった。すなわち,活性酸素の下流で生じたRCSが気孔閉口のABAシグナル伝達に関与することが明らかになった。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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