研究課題/領域番号 |
26440151
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
山口 泰華 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 特別研究員(RPD) (90448522)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ペプチドホルモン / CLE遺伝子 / 植物器官形成 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、シロイヌナズナを実験生物として、その器官形成における分裂組織の活性調節機構を明らかにするために、CLV3ペプチドホルモンなどのシグナル伝達系の作用様式に着目して解析を進めることを計画した。特に、ペプチド分子であるCLE遺伝子は、植物の様々な器官形成に幅広く分布・機能重複を示し、重要な働きを示す。研究計画開始当初は、茎頂部の形態形成におけるCLV3遺伝子のシグナル経路にのみ焦点をあてて研究遂行に臨んだが、CLV3を含むCLE遺伝子群は発現・ペプチド分子機能が非常に類似しているため、これら遺伝子の機能を網羅的に解析しなければ分子機構の解明はできないと考え、まずCLE遺伝子欠損リソースの樹立を目指した。シロイヌナズナでは、CLV3を含め、CLEシグナル領域をもつ32種類ものCLE遺伝子群が同定されている。 当該年度は、CRISPR法による網羅的なCLE遺伝子欠損体作成は順調に進み、CLE遺伝子欠損体リソースが完成した。リソースは学会等を通じて公表し、理研BRCとの連携のもと、数多くの研究者へ供与して共同研究が始まっている。一方で、根端部におけるCLE遺伝子群の網羅的発現解析を行い、RT-PCR法(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction)の結果から、これまでレポーター解析により根端部で発現していると報告されていた幾つかのCLE遺伝子については、実際にはその遺伝子の発現がほとんど検出されないことが明らかになった。さらに、CLE41とCLE44の二重欠損体を作成して解析し、CLE44欠損体の表現型などの新しい知見を得て、これらのデータを元に投稿論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、根端部におけるCLE遺伝子群の発現様式をRT-PCR法によりまとめて新たな知見を得た。 また、作成したCLE欠損体リソースの観察から、CLV3以外のCLE遺伝子の一重欠損体は、ほとんどすべてが顕著な表現型を示さないことが明らかにした。樹立したCLE欠損体リソースが、遺伝子機能解析に十分役立つことを示すために、リソース内での掛け合わせからCLE41/CLE44二重欠損体を作成して表現型を解析した。CLE41とCLE44は同じペプチド配列を有する重複遺伝子であり、CLE41については、胚軸の維管束形成において重要な役割をすることが報告されている。樹立したリソースのCLE41は報告と同様の表現型を示し、今回新しくCLE44もCLE41と同様の表現型を示すこと、さらにはCLE41/CLE44二重欠損体はそれぞれの一重欠損体よりも表現型が亢進することから、このリソースが機能重複のあるCLE遺伝子群の解析に有用である事が示された。これらの結果は、このリソースが今後のCLE遺伝子解析の主軸になることを示すことを意味している。この事をふまえ、現在は、以上の結果を投稿論文に執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
CLE遺伝子欠損体リソースの作成と、CLE遺伝子群の発現様式、リソース内での掛け合わせによる二重欠損体の解析結果をまとめて、ここまでの結果を投稿論文にまとめる予定である。CLV3の茎頂部での分子機能については、リソースの表現型の詳細な解析と茎頂部での網羅的発現解析を行い、分子機能の重複について検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
熊本地震により、本人の研究室だけでなく他の学部(工学部など)の顕微鏡も全て破損した。このため顕微鏡関連実験が一時出来なくなり、予算措置により必要機器類が納品されたのが平成28年度3月であったため、本年度内に行なう予定であった遺伝子欠損体の表現型観察などの実験に遅れが生じた。そこで、予算措置が必要な実験は次年度に行う事とし、物品費を繰り越して執行する必要があったため。
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次年度使用額の使用計画 |
塩ストレスや光ストレス下におけるCLE遺伝子欠損体の表現型の網羅的詳細観察、ならびにCLV3欠損体とその他CLE遺伝子欠損体の表現型の比較観察を行なう。また、茎頂部における組織学的発現様式を観察し、表現型の結果と合わせて論文にまとめる。
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