研究課題/領域番号 |
26440152
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
伊藤 竜一 琉球大学, 理学部, 准教授 (50322681)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プラスチド |
研究実績の概要 |
非光合成型(非緑色)プラスチドにおいては,ストロミュールと呼ばれる細管状二重膜構造が高頻度に形成される。本研究代表者は最近,葉の表皮細胞や根などの非緑色細胞においてストロミュールの形成および伸長が過剰なシロイヌナズナの突然変異体を2種取得し,その原因と推定される変異遺伝子の候補を見いだした(未発表)。本研究は,これらの遺伝子を同定し、その機能解析を通して,ストロミュール形成の調節機構を解明することを目的とするものである。平成27年度においては,以下の研究を実施した。 1. suba2変異体の原因遺伝子(SUBA2遺伝子)の確定。候補遺伝子へのT-DNA挿入変異体(ノックアウト植物)を複数ライン取得し、suba2変異体との交配によりF1個体を作成し、葉の表皮細胞におけるプラスチド形態を観察した(allelism test)。その結果、F1個体においてもストロミュールの過剰な形成および伸長が認められた。さらに、同候補遺伝子のcDNAを自身のプロモーター制御下で発現するコンストラクトをsuba2変異体に導入し、形質転換体を得た(complementation test)。その結果、不完全ながら、葉の表皮細胞におけるプラスチド形態の野生型様への回復が確認された。 2. suba1及びsuba2変異体の花粉におけるプラスチドの形態解析。非緑色組織として花粉に着目し、花粉におけるプラスチド形態の表現型を確認した。花粉において強発現するプロモーターの制御下で葉緑体移行配列-GFP融合タンパク質を発現するコンストラクトをsuba1及びsuba2変異体に導入し、各ラインの花粉を観察した。その結果、野生型では見られない独特のプラスチド細胞内分布が観察された。このことは、SUBA1及びSUBA2遺伝子(産物)が、栄養器官から生殖器官にいたるまで、植物全体において広汎に機能していることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の「今後の研究の推進方策」において記述していた、suba1変異体における遺伝子発現プロファイルのバイオインフォマティクス解析については、十分な質の配列データ(RNAseq)が得られなかったことから、未了となった。その一方で、当初は予定されていなかった花粉における形態解析が進展し、今後発展する可能性があると思われるデータを得ることができた。以上のことから、研究全体としては「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,まず、suba1変異体の原因遺伝子(SUBA1遺伝子)の確定を、suba2と同様の手法を用いておこなう。続いて、SUBA1遺伝子産物に対する抗体、もしくは、SUBA1-緑色蛍光タンパク質(GFP)融合タンパク質の発現コンストラクトを導入した形質転換植物などを用いて、SUBA1遺伝子産物の細胞内局在を確定する。さらに、suba1、suba2の両変異体に関して、花粉をはじめとする様々な非緑色組織におけるプラスチドの形態をより詳細に観察することにより、SUBA1、SUBA2の両遺伝子(産物)の生物学的機能を推定する。
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