研究課題
非光合成組織(非緑色組織)の細胞に存在するプラスチド(色素体)においては、ストロマを含有する細管状二重膜構造「ストロミュール」の高度な伸長・発達が観察される。本研究代表者は、葉の表皮や根などの非光合成組織においてストロミュールの過剰形成・過剰伸長が見られるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana L.)の突然変異体を2種取得した。本研究は、両変異体の解析を通して、ストロミュール形成の制御メカニズムの解明を目指すものである。最終年度である平成28年度においては、下記の研究をおこなった。(1)SUBA2遺伝子とMinD1遺伝子、MinE1遺伝子との遺伝的相互作用の解析。これらの3遺伝子の変異体に関して、可能な組み合わせすべての多重(2重、3重)変異体の葉表皮細胞におけるプラスチド形態を定量的に比較検討した。その結果、葉表皮の非緑色プラスチドでは、3者間で従来知られていなかった相互作用が存在することが明らかとなった。酵母を用いた yeast two-hybrid 解析もこの結果を支持するものであった。(2)suba2変異体の葉表皮の細胞における、プラスチド微細構造の観察。透過型電子顕微鏡を用いて、suba1変異体、suba2変異体(別アリルを含め2ライン)、野生型(Columbia)の葉表皮細胞の非光合成プラスチドを観察した。その結果、どちらの変異体においても、内膜系(チラコイド膜系)自体は野生型のものと同様であることから、suba変異はプラスチドの内膜構造の変化を伴う分化には影響を与えないことが明らかとなった。したがって、suba変異によるストロミュールの過剰形成・過剰伸長は、プラスチドの分化異常がもたらした間接的な影響ではなく、より直接的にプラスチド全体の形態(外形)の維持制御が撹乱された結果によるものである、と結論することができた。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 81 ページ: 271 - 282
10.1080/09168451.2016.1249452