研究課題/領域番号 |
26440157
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
真野 昌二 基礎生物学研究所, 多様性生物学研究室, 助教 (20321606)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ペルオキシソーム / タンパク質輸送 / シロイヌナズナ / apem変異体 / タンパク質間相互作用 / Peroxin / GFP / ゼニゴケ |
研究実績の概要 |
ペルオキシソームは、植物のみならず酵母や動物など広く真核細胞に存在するオルガネラである。植物では、脂肪酸代謝や光呼吸、ジャスモン酸の合成など、様々な機能を担っている。このペルオキシソームの機能が低下すると、種子の発芽不全や個体の成長抑制、配偶子認識異常など正常な生育に影響を及ぼすことが明らかにされているが、ペルオキシソームの機能発現の分子機構は十分に理解されていない。ペルオキシソームは独自のオルガネラゲノムをもたないため、ペルオキシソーム機能を支えるタンパク質は全て核遺伝子にコードされている。本研究では、ペルオキシソームへのタンパク質輸送の分子ネットワークを明らかにし、植物の高次機能を支えるペルオキシソーム機能発現を分子レベルで理解することを目指す。 平成28年度は、申請者が独自の方法で単離したシロイヌナズナのaberrant peroxisome morphology (apem) 変異体に加え、新たな実験材料としてゼニゴケを導入し、ペルオキシソームタンパク輸送系の共通性あるいは種特異性の解析を進めた。既に同定したシロイヌナズナのペルオキシソーム輸送に関わる Peroxin (PEX) および、ペルオキシソーム形成因子を、ゼニゴケゲノムに対して探索したところ、シロイヌナズナではファミリーを形成する因子がゼニゴケでは1つしかないことが明らかとなった。また、2種類のペルオキシソームタンパク質輸送系 (PTS1、PTS2) が機能するか明らかにするべく、それぞれの輸送配列を付加した蛍光タンパク質を導入した形質転換ゼニゴケを作製したところ、ペルオキシソームが可視化されたことから、両輸送系が機能していることが予想された。現在は、これら可視化ラインを親株として、CRISPR/Cas9によるゼニゴケのペルオキシソーム輸送因子の機能破壊を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ペルオキシソームタンパク質輸送には、ユビキチン系を介したシグナリングが必要とされているが、その解析に関わる論文作成のためのデータを揃えることができた。 ゼニゴケにおいては、タンパク質輸送を含むペルオキシソーム動態に関わる因子群の同定のため、インフォマティクス解析を行い、ユビキチン系シグナリングに関わるPEX4のオルソログを含む、候補因子を選抜することができた。また、ゼニゴケにおけるペルオキシソーム輸送系の存在の確認のため、PTS1あるいはPTS2を付加したCitrineタンパク質を発現させたところ、ゼニゴケ細胞内のペルオキシソームを可視化させることに成功した。加えて、この可視化した形質転換体を親株として、インフォマティクス解析で同定した因子の機能破壊株の作製し、作製できたものから表現型やペルオキシソーム動態の解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
シロイヌナズナのユビキチン系を介したペルオキシソームタンパク質輸送の解析は、できるだけ早く論文としてまとめていく。CRISPR/Cas9により目的の遺伝子機能が破壊されたゼニゴケについては、表現型やペルオキシソーム動態の解析を進めると共に、他の因子についても同様の系で機能破壊株の作製を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ゼニゴケにおいて、ペルオキシソームタンパク質と予想される因子をコードする遺伝子を、CRSIPR/Cas9システムを用いて破壊する実験を開始した。遺伝子破壊株を取得できたのが、平成28年12月であり、十分な解析を行うためには、次年度においても当該課題を進める必要がある。
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次年度使用額の使用計画 |
遺伝子破壊の表現型、およびペルオキシソームの動態を明らかにする。遺伝子破壊株は、ペルオキシソームが可視化された形質転換体を親株としているため、画像データを取得し、大きさや形、数、動きの違いを明らかにする。次年度分の経費は、技術支援の雇用費、実験用の消耗品、論文の英文校閲費と投稿料に充当する。
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