研究課題
ペルオキシソームは、植物や酵母、動物など広く真核細胞に存在するオルガネラである。植物では、脂肪酸代謝や光呼吸など様々な機能を担っている。このペルオキシソームの機能が低下すると、種子の発芽不全や個体の成長抑制、配偶子認識異常など正常な生育に影響を及ぼすことが明らかにされているが、ペルオキシソームの機能発現の分子機構は十分に理解されていない。ペルオキシソームは独自のゲノムをもたないため、ペルオキシソームタンパク質は全て核遺伝子にコードされている。本研究では、ペルオキシソームへのタンパク質輸送の分子ネットワークを明らかにし、植物の高次機能を支えるペルオキシソーム機能発現を分子レベルで理解することを目指す。平成29年度は、新たな実験材料として導入したゼニゴケを使い、ペルオキシソームタンパク輸送の解析を進めた。これまでに、ゼニゴケゲノムでは、シロイヌナズナではファミリーを形成するペルオキシソームタンパク質がゼニゴケでは1つしかないこと、2種類のペルオキシソームタンパク質輸送配列 (PTS1、PTS2) を付加した蛍光タンパク質を導入した形質転換ゼニゴケでは、ドット状の蛍光が観察されることを明らかにしている。この形質転換体を使って、ペルオキシソームのマーカー酵素との共局在を免疫電子顕微鏡法で観察したところ、蛍光のドットが確かにペルオキシソームであることが明らかとなった。これら可視化ラインを親株として、CRISPR/Cas9によるゼニゴケのペルオキシソーム輸送因子の機能破壊を行ったところ、ペキソファジーに因子の一つATG2の破壊株では個体の老化が促進されることが明らかとなった。また、ペルオキシソーム輸送の効率が低下する表現型を示す、単離したシロイヌナズナのaberrant peroxisome morphology 7 (apem7) 変異体は、ペルオキシソーム膜上でのユビキチン化の異常となっていることが明らかとなった。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
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