研究課題/領域番号 |
26440158
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研究機関 | 公益財団法人サントリー生命科学財団 |
研究代表者 |
小山 知嗣 公益財団法人サントリー生命科学財団, その他部局等, 研究員 (90450668)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 葉 / TCP転写因子 / マイクロRNA / シロイヌナズナ |
研究実績の概要 |
TCP転写因子はシロイヌナズナでは24遺伝子にコードされており、CIN-like TCPとclass I TCPのサブファミリーについて、それぞれ機能解析を進めた。 CIN-like TCPについて、機能阻害植物体として8遺伝子を抑制した変異体などを作成した。逆に機能獲得型変異体を得るために、soj変異体と、マイクロRNA319AとBのそれぞれの変異体などを確立し、それぞれを交配した強制発現型変異体を作成した。さらに、TCP強制発現体とCUC遺伝子変異体を交配することにより、子葉と葉の形態を解析した結果、期待通りTCPとCUCの負の機能相関が認められた。下流遺伝子の発現について、soj変異体では、TCP3過剰発現植物と同様に、AS1, miR164A, SAUR, IAA3/SHY2遺伝子の発現上昇を認めた。 Class I-TCPについて、四重変異体を作成した。このclass I-tcp変異体はサヤにしわ形態を示すこと、開花促進の表現型を示すことが明らかになった。クロマチン免疫沈降を用いる予定のTCP14, TCP21, TCP23に対する抗体が、それぞれの抗原と反応することを、ウエスタンブロットにより確認した。 葉の発生の最終段階である老化について、エチレンと植物転写因子(TCPファミリーなど)と葉の発生制御の関連に関する総説を執筆し、Frontiers in Plant Science誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的では、1年目の計画としてTCP転写因子の機能阻害あるいは強制発現によるシロイヌナズナの形態変化を解析するものであった。そこで、CIN-likeおよびclass Iの各サブファミリーについて、機能を改変したシロイヌナズナを作成し、その表現型解析を行った。CIN-like TCP関連植物については、これまでの報告と同様に葉の形態に関する変化が認められた。class I tcpについて四重変異体を作成し、葉やさやに小さな表現型変化が認められたが、SRDX体で見られたような根や芽における大きな形態変化は認められず、さらなる機能重複があると考えられた。また、TCP下流遺伝子の解析について、これまでの知見と一致するデータが得られ、次年度の計画の基礎データとなった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に作成した変異体などを用いた表現型解析を行うとともに、以下の分子レベルの解析を行い、CINとclass I-TCPの両サブグループの生物学的機能の全容解明に向けた基礎知見を得る。 class I-TCPサブグループでは多重変異体による大きな形態異常を認めていないので、さらに、tcp8 tcp14 tcp15 tcp21 tcp23の5重変異体などを作成する。また、表現型解析を加速するために、SRDX配列を用いた抑制型TCP遺伝子をtcp多重変異体に導入する。 TCP下流遺伝子発現制御ネットワークの解明に向けて、前年度に調製した抗体を用いたクロマチン免疫沈降実験を行い、下流遺伝子とTCP転写因子の直接的な相互作用解析を行う。得られた相互作用の生物学的な意義を明らかにするために、下流遺伝子の遺伝子発現解析を行う。 TCP下流遺伝子発現解析から、tcp変異体の表現型の原因と期待される遺伝子を推測し、遺伝学的な実証実験に着手する。具体的な実証内容としては、tcp変異体においてTCP下流遺伝子を強制発現させた場合にその表現型異常が軽減される、あるいは、複数の下流遺伝子変異体の交配により似た表現型異常が再現されることなどを指標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験試薬の購入に際して、値引きを得ることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
植物表現型解析に使用する培地や育成関連消耗品、クロマチン免疫沈降やリアルタイムPCR実験に用いる分子生物・生化学実験試薬、ChIP-シーケンス実験に用いる次世代シーケンサー関連試薬などに使用する計画がある。
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