研究課題
シロイヌナズナTCP転写因子ファミリーのうち、CIN-like TCPサブファミリーとclass I TCPサブファミリーについて、研究を推進した。CIN-like TCPサブファミリーでは、一昨年度に作成したマイクロRNA(miRNA319)変異体を利用して、二重変異体を作成することにより、miR319の機能を阻害し、標的となるTCP遺伝子5個の過剰発現を認めた。また、その葉の鋸歯サイズを定量することにより、本マイクロRNAが相加的に鋸歯形成を抑制することを見出した。さらに、鋸歯形成因子CUC2遺伝子の変異体cuc2とmiR319変異体の二重変異体では、鋸歯形成が全く認められないなどの表現型を得た。さらに前年度に確立したTCP機能獲得型変異体とcuc変異体との二重変異体でも同様の結果を得ることにより、両遺伝子ファミリー間の機能相関を認め、TCP転写因子によるCUC遺伝子の負の制御という期待通りの知見を得ることができた。一方、miR319二重変異体では早期にクロロフィル含量が減少するなど、葉の老化を促進することを認め、miR319がTCP遺伝子の制御を介して、老化開始時期を決定する遺伝学的な証拠を得た。Class I TCPサブファミリーについて、前年度に作成した5重変異体が葉の平面構造を形成できない異常を認めた。SRDX体に認められる弱い表現型に似ていることから、それらの遺伝子の葉における機能と考えられる。一方、これまでに作成した変異体を用いた遺伝子発現解析からは、CIN-like TCPサブファミリーとclass I TCPサブファミリー間における遺伝子発現の量的な差異は明確でなく、class Iサブファミリーに特異的な機能である可能性が考えられる。
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