研究課題/領域番号 |
26440159
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
勝 義直 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00332180)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 副腎ステロイド受容体 / 分子進化 / 分子シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究は、「生物進化における副腎ステロイド受容体タンパク質の機能獲得プロセス」の解明を目的としています。ステロイドホルモン受容体は、核内受容体遺伝子スーパーファミリーに属しているホルモン依存的な転写制御因子です。そして、2つのグループである「性ステロイドホルモン受容体」と「副腎ステロイドホルモン受容体」に大別することができます。このうち「副腎ステロイドホルモン受容体」は、ヒトでは代謝・電解質制御・免疫など広範囲の生理作用に関与していることが分かっています。それでは、ヒトが持つ「副腎ステロイドホルモン受容体」は生物進化においてどの生物の段階から出現したのでしょうか。また、ヒトで認められる代謝や電解質制御などの生理的機能はどの生物でも同じなのでしょうか。このようなステロイドホルモン受容体それ自身と受容体が有する生理機能の成立に関わる根本的な問いかけの答えは今もって得られていません。以上のことを踏まえて、下等な脊椎動物からの「副腎ステロイドホルモン受容体遺伝子」の単離と機能解析・多種の副腎ステロイドホルモン受容体との比較を行い、「生物進化における副腎ステロイド受容体タンパク質の機能獲得プロセス」の解明を目指しています。 本年度は、いわゆる古代魚として知られるガーを材料として「副腎ステロイドホルモン受容体遺伝子」の単離を試みました。ヒトなど高等脊椎動物で認められる2種類の副腎ステロイドホルモン受容体のうち「糖質コルチコイド受容体」のcDNAの単離に成功しました。また、様々な副腎ステロイドホルモンに反応して転写活性を上昇させることも見出しました。さらに、ヒトの「糖質コルチコイド受容体」とのホルモン応答性を行ったところ、ガーの受容体はヒトの受容体よりも副腎ステロイドに対する感受性が高いことが判明しました。分子シミュレーションを用いてホルモンとの相互作用の立体構造解析も行いました。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、本研究助成の2年目であり、遺伝子の単離と機能解析を行いました。その結果、これまで存在が確認されていなかった古代魚からの「糖質コルチコイド受容体」の単離に成功しました。さらにホルモンとの応答性を調べ、ヒトの受容体との比較をしている。以上の結果は、論文として報告しており高い評価を得ている。これらの達成は本研究推進にとって非常に有用な成果を提供しており、次年度の研究進めるための大きな原動力となります。これらのことから「おおむね順調に進展している」と評価しています。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の成果として古代魚であるガーから副腎ステロイド受容体の一つである糖質コルチコイド受容体の単離することができました。また、ホルモン応答性を調べ副腎ステロイドに応答すること、ヒトの糖質コルチコイド受容体よりもホルモンに対する感受性が高いことを明らかにしました。今後は、もう一つの副腎ステロイド受容体である鉱質コルチコイド受容体の単離を行うこと、そして単離した遺伝子産物の機能解析を行います。1. ホルモンに対する応答性を調べる、2. 受容体の細胞内局在およびDNAとの結合性を調べます。3. 分子シミュレーションによるホルモン結合の立体構造の解析を行います。以上のように遺伝子単離・機能解析を行うことにより、「生物進化に伴う副腎ステロイド受容体の機能進化」の解明を進めていきます。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度においても計画的に助成金の使用を遂行したと考えています。最終的に次年度助成金使用額が生じた理由としては、3月に入ってから購入した消耗品があったことによる会計上の未使用分であり、実際には該当年度中に使用が完了しています。
|
次年度使用額の使用計画 |
翌年度分として請求した助成金の使用計画は基本的にこれまでと代わりなく研究推進のために着実に執行することを予定しています。また、年度の出来るだけ早い段階での執行を心がけ、残予算の適切な執行を着実に行います。
|