研究課題
本研究は、副腎から分泌されるステロイドホルモンである電解質コルチコイドの受容体に焦点を絞って、分子進化を解明するために遺伝子の単離・ステロイドとの結合・転写活性化を調べた。脊椎動物の進化の指標となる古代魚(ガーとチョウザメ)を実験材料にして、電解質コルチコイド受容体の単離を行った。アミノ酸配列から分子系統樹を作成し、一般的な真骨魚類の上方に位置することを明らかとした。これは、現在報告されている魚類の系統進化と一致している。次に、受容体のホルモン応答性を調べた。受容体はホルモンと結合し、基本転写因子群をリクルートし、結果として標的遺伝子の転写を活性化する。申請者がこれまでに確立したアッセイ法を活用して、ホルモン応答性を調べた。その結果、他脊椎動物の電解質コルチコイド受容体と同様に、アルドステロン、コルチコステロンを含む多くの副腎ステロイドに応答することが判った。さらに、古代魚の電解質コルチコイド受容体は、黄体ホルモンであるプロゲステロンにも反応するという興味ふかい結果を得た。ヒトなど高等脊椎動物ではプロゲステロンには反応しないことが知られている。さらに、ヒトの電解質コルチコイド受容体の活性を阻害するスピロノラクトンという化合物は、古代魚の電解質コルチコイド受容体を阻害ではなく活性化するという驚くべき反応を示した。これらの結果は、脊椎動物の進化において電解質コルチコイド受容体の生体内機能が変化してきたことを物語っている。さらに、古代魚の電解質コルチコイド受容体がプロゲステロンに応答するという結果は、古代魚の生体内ではプロゲステロンを電解質コルチコイド受容体のリガンドとして利用していることを意味している。ヒトと古代魚の電解質コルチコイド受容体のホルモン応答性の差異は、ヒトの電解質コルチコイド受容体関連の疾患に対する創薬にも繋がる重要な成果である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (1件) 備考 (2件)
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