研究課題/領域番号 |
26440164
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
内山 実 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 客員教授 (50095072)
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研究分担者 |
今野 紀文 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 講師 (50507051)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 無尾両生類 / 体液恒常性 / アンギオテンシンⅡ / ATR / 血管平滑筋 / c-fosタンパク |
研究実績の概要 |
両生類は生活史を通して水環境から離れることはできないが,様々な生息環境に適応放散している.外部環境へ順応するためには,体液の恒常性(体液量と体液成分の維持)が,最も重要な因子の一つである.脱水時の索水行動と吸水行動の観察から,索水・ 吸水行動の違いが,生息環境への適応に役立っていることが示唆された.樹上生種の日周期リズムでは,薄明時に活発化,夜間は不活発になった.実験室内環境の温度,湿度,気圧を変化させた実験から,行動の変化や雨鳴き行動は皮膚からの体水分の不感蒸泄に関わる温度と湿度の影響が重要で,気圧の影響は無いようである. 乾燥処理により活性化する中枢神経系領域の探索を行った.アマガエルとオオヒキガエルの脳連続切片を作成して,中枢神経系の血液脳関門領域を同定した.アマガエルc-fosタンパクをクローニングし,特異抗体を作成した.c-fosタンパク発現部位について,解析を進めた.昨年度作成したアンギオテンシン受容体抗体を用いて,発現部位の同定とc-fosタンパクとの共局在部位を検討したが,十分な結果に至っていない. アマガエルとウシガエルの脳室内ホルモン投与実験を行った.アマガエルの脳弓下器官の同定と破壊実験を試みている.アマガエルについては,アンギオテンシンⅡ による経皮吸水行動の活性化が観察された.一方,ウシガエルの吸水行動にはアンギオテンシンⅡの有意な影響は,現在まで得られていない. ウシガエルのアンギオテンシン受容体(AT1R,AT2R)をクローニングし,脳ならびに体組織における発現をRT-PCR法により解析した.AT1Rは脳,肺,肝臓,大腸,腎臓,脾臓,膀胱膜で発現していた.AT2Rは心臓,動脈,肺,胃,膀胱膜で発現していた.乾燥環境や脱水環境下におけるAT1RとAT2Rの発現動態は,腹側皮膚と腎臓で有意に増加した.一方,脳領域での変化は見られなかった.以上の成果を投稿準備中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)索水行動と吸水行動の観察:アマガエルの索水・吸水行動を記録した.特に赤外線カメラを用いて夜間の行動記録し,日中,薄明時と暗黒時の比較を行った.温度,湿度,気圧についての変化と行動記録を行い,アマガエルの雨鳴きを誘発する因子の探索に関しての基礎データを得た. (2)各種抗体による免疫組織化学的研究:市販c-fos抗体ならびにアマガエル用c-fos抗体を使用して,ウシガエルとヒキガエルの脳領域における発現の観察に用いた.抗体の特異性あるいは実験技術上の問題があるため,安定した結果が得らなかった.このため,新たに実験方法を工夫している. (3)アンギオテンシン受容体(ATR)ならびにTRPVの分子生物学的研究:アズマヒキガエルのATR遺伝子とTRPV遺伝子の部分配列をクローニングしている.アマガエルをもちいて,外部環境変化時(温度変化と湿度変化)におけるTRPV1とTRPV4遺伝子発現の変化を定量的PCRで調べている. ウシガエルについては,AT1RとAT2Rのクローニングを確認後,脳など各器官での発現ならびに環境変化に対する発現変動を調べた.
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今後の研究の推進方策 |
体液変動を生じさせて活性化する中枢神経系領域の探索:アマガエルとウシガエルを使用する.場合によりオオヒキガエルを用いる. ① 免疫組織化学的実験:c-fos発現部位とアンギオテンシン受容体(AT1RならびにAT2R)発現部位を観察する.TRPV1とTRPV4についても同様に調べる.各抗体はクローニングデータに基づき作成済み ②分子生物学的実験:脳内c-fos mRNA発現領域とAT1R mRNA発現領域ならびに体液変動との関係をリアルタイムPCR法により調べる. ③生理学実験:浸透圧や体液変動に重要と考えられる脳弓下器官領域の同定を破壊実験により行う.ANGⅡ脳室内投与と脳部位の破壊による影響を調べる.血圧変動と浸透圧ならびにNa+濃度の変化を指標とする. 脳領域の発現変動を調べるために大型動物種のウシガエルを使用しているが,生理実験結果では体液変動に対する反応が乏しいという結果が得られている.前半は確認実験を続けるが,場合により陸生種のヒキガエルを使った実験に切り替える可能性もある.
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次年度使用額が生じた理由 |
分子生物学実験に用いる試薬類の納入が遅れたので,支払が遅くなったことによる.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度において,試薬類の購入に使用する.
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