研究課題/領域番号 |
26440167
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
高橋 純夫 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (90144807)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 排卵 / 卵巣 / ステロイドホルモン / マウス / 成長因子 |
研究実績の概要 |
転写因子Runx3が,マウスの卵胞発達と排卵には必須であることを明らかにしてきた。本研究計画では,マウス視床下部における排卵制御機構におけるRunx3の役割を明らかにし,さらに,卵巣における卵胞発達およびステロイド産生制御におけるRunx3の役割を解明し,転写因子Runx3の関与する卵巣機能制御のシステムの全容を解明する。本研究計画は,(1)視床下部における生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の分泌制御機構におけるRunx3の関与の解明;(2)卵巣においてRunx3が関わる卵胞発達およびステロイドホルモン産生制御に関わる遺伝子の解析;(3)卵胞顆粒膜細胞におけるRunx3発現を制御する因子の解明;(4)卵巣におけるRunx3の標的遺伝子の生物学的意義の解析に区分することができる。平成26年度は,(1),(2)について研究を進めた。 雌のRunx3KOマウスは無排卵であるが,視床下部におけるGnRHとキスペプチンのmRNA発現を解析したところ,野生型に比較して両遺伝子の発現に顕著な変化が認められた。このことは,視床下部においてRunx3が,両因子の発現制御を介して排卵制御に関与することを示唆している。Runx3KOマウスの卵巣において,ステロイドホルモン合成酵素と成長因子の遺伝子発現を解析したところ,Cyp11a1遺伝子とインヒビンベータサブユニット遺伝子の発現が,野生型に比較して有意に低下していた。このことから,Runx3がステロイドホルモン産生やアクチビン,インヒビン産生制御に関与することが示唆された。ついで,卵巣におけるRunx3の発現の経時的変化を解析したところ,2次卵胞の顆粒膜細胞から発現し,性成熟開始時期から卵巣での発現が増加することを明らかにした。各領域におけるRunx3発現細胞の同定ならびに,転写制御に関与する遺伝子を解明することが必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の初年度は,マウス視床下部,下垂体,卵巣におけるRunx3の役割を,雌Runx3KOマウスを用いて解析することを計画していた。視床下部においてRunx3が排卵制御に関与していることを示すことができた。また,下垂体における生殖腺刺激ホルモン遺伝子発現の解析も順調に進められた。卵巣においても,目的とした遺伝子の解析を実施することができた。視床下部におけるRunx3発現細胞は未同定であるが,Runx3の標的遺伝子解析のための基礎的データを収集することができた。国際学会での研究成果の報告も実施でき,おおむね研究計画は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
雌マウス視床下部において,Runx3発現細胞がGnRHニューロンやキスペプチンニューロンとどのように関係しているかを明らかにすることが重要課題である。in situハイブリダイゼイションや免疫組織化学的手法を用いて,3者の関係を解析する。さらに,視床下部における発情ホルモン作用とRunx3の関係も明らかにすることを新たな研究課題に追加する。また,これまでの研究成果の一部を本年度中に学術論文として投稿することを目標とする。
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