研究課題
転写因子Runx3をノックアウトされた雌マウスは無排卵であり,子宮は退化し,卵巣ステロイドホルモンの分泌は低下していると考えられる。本研究ではマウスにおけるRunx3の関与する卵巣機能制御のシステムの全貌を解明することを目的とする。視床下部の生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の分泌制御機構におけるRunx3の関与を解析した。Runx3 mRNA発現細胞をin situ hybridizationにより解析したところ,視索前野,弓状核を含む広範な領域に検出でき,Kisspeptinニューロンの発現部域にも局在が認められた。このことは,Runx3がKisspeptinニューロン機能の制御への関与の可能性を示唆する。雌Runx3ノックアウトマウスでは,視床下部AVPV領域でのKisspaptin mRNA発現が低下し,その逆にARCでのkisspeptin mRNA発現が増加していた。このことは,Runx3がKisspeptinニューロン機能の制御への関与の可能性を示唆する。卵巣では,Runx2とRunx3 mRNAの発現が5週齢から顕著に増加することが分かった。これは排卵の開始とともに遺伝子の発現が高まることを示唆した。卵巣におけるRunx3の作用を解析するために,卵巣顆粒膜細胞OV3121細胞を解析したところ,Runx1とRunx2の発現は認められたが,Runx3の発現はなかった。そこで,OV3121細胞にRunx3発現ベクターを導入して,Runx3を発現させた。一部の遺伝子の発現に変化が認められたので,より詳細な解析をおこなう。卵巣顆粒膜細胞におけるRunx3の役割を解明するために,顆粒膜細胞で機能する転写因子Foxl2とRunx3の相互作用を解析するために,Foxl2の発現ベクターを構築した。Foxl2は発情ホルモン受容体と結合することを確認した。
2: おおむね順調に進展している
視床下部におけるRunx3の解析は計画通りに進行している。しかしながら,卵巣における解析では,Runx3の強制発現とsiRNAによるノックダウン系による解析を予定していたが,解析が進んでいない。そのために,Runx3の標的遺伝子が解明できていない。また,顆粒膜細胞におけるRunx3の発現制御機構の解明が必要であるが,解析が遅れている。
視床下部・下垂体系においてRunx3が,生殖腺刺激ホルモンの分泌制御に関与することが明らかになってきた。生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の分泌にかかわるKisspsptinニュ-ロンの発達や機能制御にかかわるRunx3の役割を調べる。そこで,視床下部におけるRunx3とkisspeptinが同一細胞に共発現しているか解析する。さらに,Runx3ノックアウトマウスににおけるKisspeptinニューロンの変化をin situ hybridization により解析する。その一方,卵巣においてRunx3が卵胞機能制御に関わることも考えられる。そこで,OV3121細胞,顆粒膜細胞,莢膜細胞においてRunx3を過剰発現またはsiRNA法によりノックダウンして,Runx3の作用ならびに,標的遺伝子の候補を探索する。その後にRunx3による遺伝子発現制御の機構を解析する。それぞれの基本手技は確立し,必要なDNAコンストラクトも調製できているので,効率的な実験をめざす。会わせて,学術論文投稿の準備をすすめる。
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Journal of Reproduction and Development
巻: 未定 ページ: 印刷中