研究課題/領域番号 |
26440168
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
上田 健治 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (80279504)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 花粉形成 / イネ / L-アラビノキナーゼ / 突然変異体 / 細胞壁 / 糖代謝 |
研究実績の概要 |
イネの花粉突然変異体collapsed abnormal pollen1 (cap1)の開花期の変異花粉は細胞質成分の殆どを失い、花粉外壁(exine)のみになっている。花粉変異の原因遺伝子CAP1は、996アミノ酸からなるL-アラビノキナーゼ様タンパク質をコードしている。正常なイネでは、CAP1遺伝子は花粉と葯の内壁で発現し、花粉形成の二細胞期に最も発現量が高くなる。L-アラビノキナーゼは細胞壁代謝で遊離したL-アラビノースをリン酸化して細胞壁多糖へ再利用する経路で働くとされるが、その実体は殆どわかっていない。また、イネゲノム内には、葉や根などの体細胞組織で発現するOsARA1が見出されている。CAP1は花粉形成で重要な役割をしているのに対し、OsARA1は体細胞組織で機能すると考えている。本年度は、CAP1タンパク質の酵素活性に重要な領域を明らかにするために、変異CAP1タンパク質を作製して解析をおこなった。その結果、C末端領域に予想された糖結合ドメインが重要であることが明らかになった。さらに、花粉形成過程における重要性を明らかにするため、CAP1タンパク質に対する抗血清をもちいて花粉内での局在を明らかにした。その結果、小胞子ではCAP1タンパク質は殆ど検出されなかったが、二細胞期に顕著なシグナルが検出された。従って、CAP1タンパク質は花粉形成過程の二細胞期に重要であり、特に、花粉内壁(intine)の形成と共に雄原細胞壁の形成に関わることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イネのL-アラビノキナーゼの酵素活性の報告は無いため、酵素活性に重要な領域は、タンパク質ドメインファミリーデータベースであるPfamなどで予想するしか無かった。本研究で、CAP1のL-アラビノキナーゼ活性に重要な領域が明らかになった。また、L-アラビノキナーゼの細胞内での局在の情報は無いため、非常に重要な知見が得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
変異CAP1タンパク質の解析をさらに進めるとともに、CAP1タンパク質の酵素活性を阻害する化合物の探索を試みる。また、花粉形成過程での細胞内局在についてイネゲノムに含まれるもう1つのL-アラビノキナーゼOsARA1についてもおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品について、当初の予定よりも安く購入できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の消耗品として使用する。
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