研究課題/領域番号 |
26440169
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
北澤 多喜雄 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (50146338)
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研究分担者 |
海谷 啓之 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, その他部局等, その他 (40300975)
寺岡 宏樹 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (50222146)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グレリン / モチリン / 系統発生 / 両生類 / 魚類 / ゼブラフィッシュ / モチリン受容体 / グレリン受容体 |
研究実績の概要 |
2015年度の研究実績は以下に示す通りである。 ①両生類:ウシガエルとアカハライモリの摘出消化管収縮に与えるウシガエルグレリン、イモリグレリンの作用、受容体遺伝子の分布を検討した論文をGen. Com. Endocrinologyに投稿してacceptされた(2015年12月、印刷中)。モチリンがカエルの消化管を収縮させることも初めて明らかにした。 ②ゼブラフィッシュ:ゼブラフィッシュモチリン様ペプチド(ZebraMOTLP)を合成しその収縮活性を摘出腸管で検討した。ウサギ12指腸収縮活性からこの物質が哺乳類のモチリン受容体には弱い生物活性を示すことを明らかにした。ZebraMOTLPは、ゼブラフィッシュMOT受容体発現細胞では10-100nMで著明な活性を示したが、哺乳類(ヒト型)MOTには殆ど活性が認められなかった。ZebraMOTLPは、ゼブラフィッシュ胃腸管に収縮反応を誘起した。しかし、この収縮は小さく、発現には高濃度(100 nM-10 μM)が必要であった。MOT受容体のmRNAは、ゼブラフィッシュ消化管全体にほぼ均一に存在していたが、発現量はニワトリやラットに比べ低かった。これらのことからゼブラフィッシュにMOTシステムは存在するもののその収縮調節への関与は低いと考えられた。今後、MOT受容体のノックダウンを考えている。また、グレリンもゼブラフィッシュの胃腸管には著明な収縮を示さなかった。 ③モルモット:合成したモルモットMOTはモルモットの胃腸管に収縮を誘起しないこと、遺伝子解析からモルモットにMOT受容体が存在しない可能性を明らかにした。モルモットグレリンに関しては胃の粘膜に局在することを免疫組織化学的に明らかにした。モルモットではグレリン系のみが収縮調節に関与している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定より遅れている原因としては以下の2点が挙げられる。 1つ目は、比較生物学研究で科研費研究と同時進行で行っているモルモットのモチリン、グレリン研究中に、in vitro検討でnegativeな反応(作用が出ない)が出たため、これを確認すべき種々の検討を計画実施する必要が起きたため、そちらに時間がとられてしまった(モルモットでのグレリンの作用に関しては今年度中に論文を作成する。モチリンに関しても論文作成準備をする)。 2つ目は、カエルとイモリの論文作成とその修正、再投稿に時間を要し2015年12月にやっと掲載可となった。また、以前行っていたマウス心房のムスカリン受容体に関しての紹介論文執筆を依頼されており、論文の最終チェックや校正などにも時間がとられてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、アフリカツメガエルとゼブラフィッシュに的を絞り以下のように研究を進めていく予定である。また、モルモットにおいても研究の収束を試みる。 アフリカツメガエル:ウシガエル腸管でモチリンが収縮を起こしたことから、ウシガエルでモチリンやモチリン受容体の構造を解析しようとしたが、遺伝子情報が不十分のため頓挫した。そこで遺伝子情報が十分なアフリカツメガエルにおいてモチリンの基本的な生理作用を再確認した後に遺伝子レベル、そして胃腸管の抽出物からアフリカツメガエルモチリン様物質、モチリン受容体の同定を試みる。モチリン系の同定が出来れば両生類では初の成果になる。 ゼブラフィッシュ:作成したprimerでモチリン、モチリン受容体、グレリン、グレリン受容体のmRNAの発現を調べることが可能になったので、先ずそれぞれの標的物質の遺伝子が孵化後どのように推移するかをreal time PCRで解析する。時間的推移が確認出来れば上昇する期間をターゲットしてモルフォリノを用い遺伝子ノックダウンを行う。本研究では最初にモチリン、モチリン受容体のノックダウンを試み、その後の成長や形態に与える影響を明らかにする。グレリンのノックダウンにおいても既報と比較して検討する。 モルモット:モルモットグレリンについて免疫組織化学、不足成績の収集に務め、他の成績とも合わせて論文作成を行う(2016年度中)。
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次年度使用額が生じた理由 |
依頼で論文執筆を受けたこと、カエル、イモリの論文の作成、投稿、修正、アクセプトまでに時間を要したことでゼブラフィッシュの研究を推し進めていくのが時間的に難しくなった。また、カエルにおいても今後の展開を考えた場合ウシガエルよりもアフリカツメガエルが良いとの結論になったが、結論を出すのにも少し時間がかかり、研究自体の推進が遅れたことから次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
ゼブラフィッシュでのモチリン、グレリン系の検討に必要なゼブラフィッシュグレリンの合成に10mgで50万円程度が必要になる。ゼブラフィッシュで遺伝子をノックダウンするために用いるモルフォリノは濃度や注入時間等を検討しなければならず予備検討も必要である。また、ノックダウンする標的もモチリン、グレリン、モチリン受容体、グレリン受容体と多いのでノックダウンするだけでも60万円程度必要となる。また、アフリカツメガエルは飼育して使用するが、飼育の水槽やカエル自体の購入に20万円程度支出する。免疫組織、機能的な研究の消耗品として50万円程度を出費する。合計で180万円となる。
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