研究課題
今年度は両生類と魚類の消化管においてモチリンの作用を検討した。結果は以下の通りである。1、両生類:ウシガエルの上部消化管(十二指腸に相当)でヒトモチリンによる濃度依存性(100nM-1000nM)収縮が観察された。他の消化管部位では反応性はなかった。哺乳動物のモチリン受容体遮断薬(GM109)はウシガエル消化管のモチリン収縮に影響を与えなかった。モチリン抗体(C-末端認識)を用いての免疫組織化学的検討ではモチリン様免疫活性陽性物質は腸粘膜に認められなかった。これらのことから、ウシガエルにもモチリンシステムが存在して消化管運動に影響を与える可能性が示唆された。モチリン様物質の構造は哺乳類のそれとは異なることが推察され今後同定が必要である。2、魚類:ウサギ十二指腸でゼブラフィッシュモチリン様ペプチドはヒトモチリンより3000倍低い収縮活性を示した。ゼブラフィッシュ腸管標本においてもモチリン様ペプチドは高濃度(10000nM)でないとゼブラフィッシュ腸管収縮に影響を与えなかった。しかし、誘起される収縮の大きさは対照としたアセチルコリン収縮の20%以下で極めて低いものであった。ヒトモチリンも高濃度でわずかな収縮を誘起したのみであった。一方、ゼブラフィッシュモチリン受容体の発現細胞でモチリン様ペプチドは、10-100 nMで活性を示した(同じ濃度範囲でヒトモチリンは無反応)。モチリン受容体遺伝子の発現は、腸管、脳、肝臓、心臓でほぼ同程度であり、モチリンが収縮を起こすニワトリ胃腸管の発現量と比較すると極めて低値であった。キンギョの消化管でもヒトモチリン、ゼブラフィッシュモチリン様ペプチドの収縮活性は殆ど認められなかった。これらのことから、魚類にはモチリンシステムが存在するもののその生理的意義(消化管運動調節能)は低いと考えられた。
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