研究課題/領域番号 |
26440170
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
永田 典子 日本女子大学, 理学部, 教授 (40311352)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 花粉 / 電子顕微鏡 / オルガネラ / シロイヌナズナ / 葯 |
研究実績の概要 |
花粉形成過程では種々の脂質系オルガネラが観察されるが、未だそれらオルガネラの動態・機能等の全貌は明らかではない。私は、これまでに開発してきた広域TEM(透過電子顕微鏡)画像取得法を応用することで、網羅的で抜けのないオルガネラの形態・構造画像を入手し、葯全体におけるオルガネラマップを作成できると着想した。将来的には、種々の脂質関連遺伝子欠損変異体のオルガネラマップも取得し、大量画像からの画像分類・統計学的処理を行い、脂質成分とオルガネラ構造・動態との関連付けを行うことを目的とする。 当該年度においては、まず野生型シロイヌナズナの葯を材料にして、広域TEM画像の取得を行った。葯内におけるオルガネラは、日を追うごとに劇的にその形態と分布を変化させる。そこで、花粉発達ステージの段階を追って画像の取得を行った。これまでに取得した画像(いずれも撮影倍率12,000倍)は、(1)葯(花粉一細胞期)→撮影枚数3,900枚、(2)葯(花粉二細胞期初期)→撮影枚数5,600枚、(3)葯(花粉二細胞期後期)→撮影枚数4,875枚、(4)葯(花粉三細胞期)→撮影枚数4,800枚、の4つである。これらの画像は、自動結合ソフトを使って自動結合し、さらに手動補正とむら補正を行うことで、つなぎ目のない超広域の画像とすることに成功した。過去の研究においては、葯内の脂質系オルガネラ情報は限られた断片的なものであったが、本研究により取得した広域TEM像により、連続した脂質系オルガネラの変化の全貌を示すことできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書においては、野生型シロイヌナズナの葯全体の時空間的なオルガネラマップを作成することを目的に掲げている。広域TEM像の取得により、その当初の目的は順調に達成されたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
広域TEM像の取得において一番の律速段階は、大量の画像を「ずれなく」結合するところである。全自動結合ソフトを用いれば短い時間でできるが、それでは「ずれ」が残ることが多い。現在、その部分は「手動補正」において対応しているが、そのプロセスをいかに簡略化し高速化するかが、今後の作業効率に大きな影響を与える。この研究は、多くの広域画像を取得することによってこそ、統計学的処理ができるなどの絶大な効果が期待できるものである。そこで、手動補正の作業効率の適正化を進め、より多くの画像取得にまずは尽力したい。その後に、突然変異体における広域TEM像取得などを効率よく進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究においては、TEM(透過電子顕微鏡)という特殊技能が必要である。当初は臨時勤務者の雇用を予定していたが、特殊技能であるが故に、適切な人材が見つからなかった。しかし、幸いにも本年度の計画は野生型シロイヌナズナの観察を行うということであったため、過去に固定・包埋された良好なサンプルを用いることで事なきを得た。また、大量画像の撮影等のために新しくソフトの購入(開発含む)を行う予定だったが、汎用性の高いPhotoshopを利用することでその問題点が回避されたため、予算を使うことがなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
既に現在、適切な臨時勤務者が見つかっている。次年度には、突然変異体の予備的TEM観察も進めるため、臨時勤務者による試料作成は必須作業である。遅れた分を取り返す意味でも雇用日数を確保したいので、次年度の助成金とあわせて使用する必要がある。また次年度の課題としては、画像の結合速度の効率化があげられる。そこで、ソフトの購入・開発費としても、本年度分の繰り越し予算を必要とする。
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