研究課題
アフリカツメガエル(Xenopus laevis)を低温曝露すると,速やかに赤血球,白血球,栓球(哺乳類の血小板に相当し,止血血栓形成を担う)の全ての末梢循環数が低下し,汎血球減少症を呈する。このモデルを下にして,血球産生(造血)の環境応答を解析し,脊椎動物における調節系の多様性と普遍性の理解を進める。アフリカツメガエル(Xenopus laevis;2016年に全ゲノム解析が報告)とともに,既に全ゲノム情報が公開され,ナショナル・バイオリソース・プロジェクト(広島大学)が提供するネッタイツメガエル(Xenopus tropicalis)を中心に,低温,低酸素の環境に応答する血球産生変動を検討した。第三年度では,造血系分子の変動の精査を進めた。赤血球産生因子エリスロポエチン(EPO),栓球産生因子トロンボポエチン(TPO),これらの受容体分子(各々EPOR,Mpl)のmRNAの組織発現を精査した。抗体調製では,アフリカツメガエルの抗EPO受容体モノクローナル抗体3種を作出した。一方,「リガンド受容体結合調節モデル実験」に資するEPO/TPOのELISA開発は遅れ,in vitroバイオアッセイで代替えしたが,血中濃度測定には感度が不足している。組換えEPOとTPOの大腸菌発現系に大幅な改良を進めた。細胞解析では,自治医科大学・分子病態研究部・西村智教授と共同で,二光子顕微鏡により世界で初めて血流中の有核栓球,有核赤血球,白血球のイメージングに成功し,汎血球減少症の発症機序の検討が可能になった。走査型電子顕微鏡により,低温曝露個体の下大静脈血管壁に栓球の接着を認め,温度依存性の栓球減少症の一因であることが判明した。常温下,低温下の栓球のプロテオームの変化をショットガンプロテオミクス解析へ進め,この温度依存的な栓球接着の分子機序で有意なGO/パスウエイの抽出を実施した。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (24件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件) 備考 (3件)
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