研究課題/領域番号 |
26440173
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
宮川 信一 和歌山県立医科大学, 先端医学研究所, 講師 (30404354)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 膣 / 女性ホルモン / 生殖器官 |
研究実績の概要 |
輸卵管・子宮・膣からなる雌性生殖管は、生殖の場として生物の根源に関わる役割を担っており、その細胞増殖・分化は、女性ホルモン(エストロゲン)によってダイナミックに制御されている。女性ホルモンは生体の恒常性維持、生殖、発生・分化をはじめとした様々な局面で重要な機能を果たしているが、その女性ホルモンシステムの破綻は、乳癌や子宮癌・膣癌などの雌性生殖器官の癌の要因となる。本研究はマウス雌性生殖管をモデルとして、女性ホルモンと、その作用をメディエイトするシグナル因子の候補としてのWntシグナルとのクロストーク解析から、正常時のホルモン作用、及びホルモンシステム破綻のメカニズムを明らかにすることを目的としている。前年度から引き続き、上皮特異的女性ホルモン受容体アルファ(ERα)ノックアウトマウスの解析を行った。我々は以前、アンフィレギュリンが上皮細胞の分化過程に必要であることを示してきたが、最終分化には他の成長因子、具体的にはFgfシグナリングが寄与する可能性を見出した。卵巣を除去したマウスにエストロゲンを投与したところ、Fgf22、Fgf18の発現変動が見られた。また各種Fgf受容体サブタイプは上皮組織を含む組織局在を示した。以上の結果から、エストロゲンによる膣組織の制御にはアンフィレギュリンだけではなく、Fgfを含む各成長因子が複雑に相互作用しながら行われていくことが明らかになった。今後、遺伝子改変マウスなどを利用して、膣におけるFgfシグナリングの重要性を明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者は昨年度6月に所属変更した。移動先の動物施設がSPF施設であるため、遺伝子改変マウスを含むマウスの輸送をIVFによって行う必要があった。その移動元、移動先の実験実施日のアレンジや、微生物検査等により、マウスを利用するのに想定外に時間がかかったため、やや実験スケジュールが遅れ、次年度への繰り越し申請を行った。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、遺伝子改変マウスを使った表現型解析を行っていく。上皮特異的女性ホルモン受容体アルファ(ERα)ノックアウトマウスのほか、既にFgf関連、Wnt関連遺伝子のノックアウトマウス(ノックイン)マウスの解析も進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者は平成28年6月に自然科学研究機構・岡崎統合バイオサイエンスセンターかえあ和歌山県立医科大学・先端医学研究所に移動した。使用するマウスを振所属先の動物施設に導入する際、施設がSPFであるために生きた動物を直接輸送できず、IVF(体外受精)をおこなってマウスを導入する必要があった。この作業のアレンジや微生物モニタリング試験に時間を要したため、当初の研究計画に遅延が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
マウスの飼育にかかわる経費のほか、遅延によって生じて前年度に行えなかった研究に必要な物品費に充てる。マウス生殖器官のエストロゲンシグナルカスケードを同定するために各種分泌性増殖因子に注目しており、その実験に必要な器官培養や遺伝子発現解析を行っていく予定である。
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