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2014 年度 実施状況報告書

「クラゲの卵成熟誘起ホルモン=神経ペプチド」であることの証明

研究課題

研究課題/領域番号 26440177
研究機関宮城教育大学

研究代表者

出口 竜作  宮城教育大学, 教育学部, 教授 (90302257)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード卵母細胞 / 卵核胞崩壊 / 卵巣上皮
研究実績の概要

エダアシクラゲの卵巣から単離した一次卵母細胞に対し、4つのアミノ酸から成り、C末端がアミド化されているペプチド(現段階では配列を明かせないため、ペプチドXと記載する)を投与したところ、非常に低い濃度(10 nM)まで卵成熟を引き起こすことが分かった。ペプチドX のN末端やC末端を別のアミノ酸に置換したペプチドでは、卵成熟誘起作用が低くなるか、もしくは効果が失われた。また、ペプチドX のN末端側にいくつかのアミノ酸を連結した場合や、蛍光物質を付加した場合にも、効果がなくなるか、極めて弱くなることが分かった。
ペプチドX投与後に進行する卵成熟過程の経時変化(卵核胞崩壊、第一極体放出、第二極体放出のタイミングなど)は、生理的条件下である光刺激(明状態→暗状態への移行)の際に起こる変化と同様であった。また、ペプチドX投与によって得られた成熟卵は、生理的条件下で得られた成熟卵と同様、正常に受精・卵割し、幼生にまで発生した。
ペプチドXおよびそのC末端をアラニンに置換したペプチド(ペプチドYと記載)に対する抗体は、互いに交差せず、特異的に抗原を認識することが確認された。これらの抗体を用い、光刺激前のエダアシクラゲの卵巣を間接蛍光抗体法により染色したところ、どちらも卵巣上皮に散在する神経様の細胞を認識した。Zenon抗体ラベリングキットを使用して、この2つを同時染色した結果、両者は互いに異なる神経様細胞を認識していることが分かった。エダアシクラゲに光刺激を与えてから20分以内には、抗ペプチドX抗体によるシグナルは有意に減少したのに対し、抗ペプチドY抗体によるシグナルは残存していた。
以上の結果は、ペプチドXもしくはその類似体が生理的条件下でエダアシクラゲの卵成熟を誘起するホルモンとして働いている可能性を示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

年度当初の実験計画のうち、およそ4分の3の項目に着手することができ、いずれも今のところ予想通りの結果が得られている。残りの4分の1にあたる、抗体を用いた阻害実験についても、近々実施予定である。

今後の研究の推進方策

前年度の研究から、ペプチドXがエダアシクラゲの卵成熟誘起を誘起すること、および、卵巣上皮に存在し、光刺激後に放出されていることが確認された。次のステップとしては、抗ペプチドX抗体が光刺激による卵成熟を阻害するかを調べる。この実験がうまく進展しなかった場合には、ペプチドXをコードしている遺伝子を探索し、それをノックダウンもしくはノックアウトすることを試みる。いずれかの方法によって、ペプチドXが生理的条件下での卵成熟に必要であることを証明したい。
さらに、ペプチドXもしくはその類似ペプチドが他の種のクラゲ(シミコクラゲ、オベリアクラゲ、オワンクラゲ、ミズクラゲなど)やイソギンチャク(ミドリイソギンチャク、タテジマイソギンチャクなど)にも存在しているかどうか、また卵成熟誘起に関与しているかどうかについても調べていく。

次年度使用額が生じた理由

抗体を用いた阻害実験のために、いくつかの試薬の購入を考えていたが、この実験を次年度に行うことにしたため、その分として次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

早期のうちに、前年度に購入を予定していた試薬類を発注するとともに、本年度の分も当初の使用計画通りに執行していく。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Polyspermy block in jellyfish eggs: collaborative controls by Ca2+ and MAPK2014

    • 著者名/発表者名
      Arakawa M, Takeda N, Tachibana K, Deguchi R
    • 雑誌名

      Dev. Biol.

      巻: 392 ページ: 80-92

    • DOI

      10.1016/j.ydbio.2014.04.020.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Intracellular calcium signaling in the fertilized eggs of Annelida2014

    • 著者名/発表者名
      Nakano T, Deguchi R, Kyozuka K
    • 雑誌名

      Biochem. Biophys. Res. Commun.

      巻: 450 ページ: 1188-1194

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2014.06.056.

    • 査読あり
  • [学会発表] タマクラゲ属における分子系統解析と緑色蛍光発色パターン2014

    • 著者名/発表者名
      遠藤 一樹, 亀田 勇一, 出口 竜作, 並河 洋
    • 学会等名
      日本動物学会第85回仙台大会
    • 発表場所
      東北大学川内北キャンパス(宮城県・仙台市)
    • 年月日
      2014-09-11 – 2014-09-13
  • [学会発表] エダアシクラゲ放精誘起物質の作用機構2014

    • 著者名/発表者名
      小松 飛鳥, 出口 竜作, 経塚 啓一郎, 竹田 典代
    • 学会等名
      日本動物学会第85回仙台大会
    • 発表場所
      東北大学川内北キャンパス(宮城県・仙台市)
    • 年月日
      2014-09-11 – 2014-09-13
  • [学会発表] MAPキナーゼによるタマクラゲ卵の精子受容の制御2014

    • 著者名/発表者名
      荒川 美緒, 竹田 典代, 出口 竜作, 立花 和則
    • 学会等名
      日本動物学会第85回仙台大会
    • 発表場所
      東北大学川内北キャンパス(宮城県・仙台市)
    • 年月日
      2014-09-11 – 2014-09-13
  • [図書] 動植物の受精学2014

    • 著者名/発表者名
      井川 智子, 伊藤 千鶴, 伊藤 昌彦, 稲葉 一男, 井上 直和, 岩尾 康宏, 岩田 容子, 岩野 恵, 漆原 秀子, 岡本 龍史, 掛田 克行, 河野 重行, 坂本 亘, 笹倉 靖徳, 笹浪 知宏, 佐藤 賢一, 澤田 均, 柴 小菊, 関本 弘之, 土屋 亨, 出口 竜作, ほか
    • 総ページ数
      340(138-153, 185-202)
    • 出版者
      化学同人

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公開日: 2016-05-27  

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