研究課題/領域番号 |
26440179
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
豊田 ふみよ 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (10244708)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | フェロモン / ペプチド / ステロイド / プロラクチン / 性ホルモン |
研究実績の概要 |
雄腹腺中に含まれるステロイドのうち、腹腺を培養液中にインキュベートすると培養液に分泌されるステロイド(androstenedione, pregnenolone)は雌誘引活性を持つことが確認されている。一方、androstenedione, pregnenolone以外の腹腺ステロイド(testosterone,progesterone, estradiol)は培養液中に分泌されず、性的に発達した雌を誘引する効果がないことがわかっている。これらのステロイド、testosterone,progesterone, estradiolは雌の鋤鼻嗅覚上皮における嗅電図応答も生じさせる効果がないことを確かめた。一方、androstenedioneや pregnenoloneは、腹腺由来の雌誘引ペプチドであるソデフリンに対して振幅の大きい嗅電図応答を示す鋤鼻上皮部分で、同様に振幅の大きい嗅電図応答を引き起こすことを確かめた。今回の成果は雌誘引フェロモンの相互作用の細胞レベルでの詳細な解析への足掛かりとなった。さらに高次投射部位を探しあて、受容部位のフェロモン暴露により投射部位でのいかなる応答が生じるか電気生理学的、行動学的研究を展開する予定である。 雄誘引ペプチドフェロモンについては、合成されたペプチドも雄誘引効果を持つことを確認した。この雄誘引ペプチドは10-10Mで雄誘引効果を持つこと、雄の反応性はプロラクチンと生殖腺刺激ホルモンにより増大したが雌に同様のホルモン処理を行っても雄誘引ペプチドに対する反応性は認められなかった。さらに雄の鋤鼻嗅覚上皮で雄誘引ペプチドに対する嗅電図応答も確認され、その応答性もまたプロラクチンと生殖腺刺激ホルモンにより増大することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標であった、雌誘引ステロイド(androstenedione, pregnenolone)の反応部位である雌鋤細胞内伝達機構の解明についてはまだ着手できてはいないが、雌誘引ペプチドソデフリンとの雌誘引活性における相乗効果が、細胞レベルでも起こることを確認できた。今回の成果は雌誘引フェロモンの相互作用の細胞レベルでの詳細な解析への足掛かりとなったと言える。また、雄誘引ペプチドについても、合成品の有効性や有効濃度を確認できた。また雄の鋤鼻嗅覚上皮で雄誘引ペプチドに対する嗅電図応答も確認し、その応答性がホルモンの調節を受けることも確認した。雄誘引ペプチドの細胞レベルでの解析への道筋を作ることが出来たと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
BSAを結合させたAndrostenedioneでも嗅電図応答が生じることから、androstenedioneは細胞膜上の受容体に作用することが考えられる。雌誘引効果を持つもう一つのステロイドであるpregnenoloneについてもBSAを結合させてその効果を確かめる。さらにCa-imaging法により雌誘引ステロイドが引き起こす鋤鼻細胞内情報伝達系の解明を目指す。また性的に発達した雌雄の飼育水中には異性を誘引する効果があることがわかっている。飼育水中に含まれる異性誘引効果は我々が単離・同定した性誘引のペプチド由来であるのかどうかを性誘引ペプチドに対する抗体を用いたアフィニティーカラムにより飼育水から性誘引ペプチドを取り除くと飼育水の効果が消失するかどうかを確認する。また、腹腺から殆ど放出されないことが確認されているステロイドの働きについても解明したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
電気生理用品の選定と発注に時間を要し、次年度に持ち越さざるを得なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
電気生理用品の選定は終了し、本年度中には使い切ることが出来るように発注を行っており、本年度の研究に使用する予定である。
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