研究課題
季節変化に応じて、効率よく個体数を増やすことができる無性生殖と環境適応などに有効な有性生殖の間で生殖様式を転換して繁殖する生物がいる。その代表である扁形動物プラナリアは自切と再生による無性生殖を行う個体、生殖器官を形成し受精による有性生殖を行う個体、さらに季節に応じて両生殖様式を転換させる系統が存在する。代表者は、実験的有性化のシステムを用いて有性生殖転換能や生殖細胞分化能について研究を進めてきた。本課題では、環境要因と個体の生殖の関係に着目した。自然界からプラナリアを定点で定期的に採集し、個体ごとに生殖器官の有無を観察し、季節によって生殖様式の分布が変化することを明らかにした。秋から冬にかけて無性生殖を行う状態から有性生殖を行う状態に、春から夏にかけて有性生殖を行う状態から無性生殖を行う状態に転換することが明らかとなった。有性生殖から無性生殖に転換する際に、卵巣、精巣、交接器官などの生殖器官はアポトーシスにより消失することを明らかになった。また、実験室の恒常条件下でこれらの個体を飼育し、生殖器官の有無を観察し、生殖様式を転換する系統が存在することを明らかにし、その転換系統を確立した。これらの系統は1年以上の間、生殖様式を転換する現象を保持しており、生殖様式の転換は概年リズムを示すと考えられた。しかし、2年目に入ると、季節によって転換する個体は減少し、実験室環境下での概年リズムの維持は難しいと考えられた。よって、本研究を進めるためには多くの転換系統が必要であると考え、再度、以前の採集地点で採集を試みたが、採集地点にバイパスが作られ、環境が大きく変化しており、プラナリアを大量に採集することが困難になっていた。今後、新しい採集地点の検討が必要となった。
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Scientific Reports
巻: 7 ページ: 45175
DOI: 10.1038/srep45175