27年度は生物発光リズム系の改良を行い、リズム変異株の大規模スクリーニングと原因遺伝子として新規遺伝子を特定することを目指した。 昨年度に引き続き、PCC6803において生物発光リズムをイメージング法(高感度CCDカメラによって寒天培地上に生育させた多数のコロニーの生物発光を個別に認識して発光レベルを定量する方法)を実施するための改良を行った。PCC6803における発現レベルを改善したバクテリアルシフェラーゼ遺伝子を用いた新たな発光レポーター株を構築した。作製したいずれのレポーター株も高精度な大規模スクリーニングに十分な発光レベルを示さなかったが、最も発光レベルが高かったレポーター株では、イメージング法による発光リズムの検出と解析が可能であった。そこで、この株を標準株としてイメージング法による変異体のスクリーニングを実施した。定量精度に問題があったため分離した多くの変異株候補は、光電子増倍管を測光デバイスとするより高感度・高精度な測定装置で2次スクリーニングを行うと、変異表現型が再現できなかった。しかし、変異株候補の1つは発光リズムがほぼ観察できない(振幅が劇的に低下する)という表現型が2次スクリーニングで再現できた。 この変異体の既知の時計遺伝子群の塩基配列を調査し、いずれの遺伝子にも変異が見られなかったので、新規遺伝子の変異株であると考えられた。この変異株の原因遺伝子のクローニングを進めた。また、さらに多数の新規の変異体を得るために、イメージング法による変異株のスクリーニングを継続した。 今後、この新規の遺伝子を同定して、その機能を解明することにより、藍色細菌の時計機構の新たなメカニズムの解明が期待できる。また、この遺伝子のオーソログが真核植物に存在すれば、原核植物から真核植物への進化に伴う生物時計の進化の謎を解明する手がかりが得られると期待できる。
|