研究実績の概要 |
これまで、「セントロメア領域に特有なヒストン修飾」としてH4K20me1修飾が、機能的なセントロメア形成に必須であることを明らかにした。平成28年度では、DT40細胞で樹立したH4K20me1修飾導入に関与するモノメチル化修飾酵素(HMTx)の条件的遺伝子破壊株を使用し、HMTxの欠損によるH4K20me1修飾導入の阻害がセントロメア機能に与える影響を解析した。その結果、細胞周期S期の進行が阻害され細胞死が誘導されたが、本実験系では明瞭なセントロメア機能への影響は観察されなかった。現在、各細胞周期におけるHMTxの欠損によるセントロメア機能への影響を調べるために、短時間でタンパク質を分解できる実験系 (AID法) を利用した解析を進めている。 平成27年度までに、2種のヒストン修飾「ヒストンH4の5番目、12番目のLys残基のアセチル化(H4K5ac, H4K12ac)」が、クロマチンへ取り込まれる前のCENP-A-ヒストンH4複合体に導入されることを見出していた。平成28年度では、その生物学的意義を明らかにすることを目的に、生化学的および細胞生物学的解析を行った。ヒストンH4の5番目、12番目のLys残基にアルギニン変異を導入しアセチル化修飾を阻害する実験を行ったところ、効率的なセントロメア領域へのCENP-Aの取り込みが阻害された。さらに、これら修飾を導入するアセチル化酵素複合体の構成因子RbAp48を欠損させたところ、H4K5, H4K12のアセチル化が阻害され、セントロメア領域へのCENP-Aの取り込みが阻害された。これら結果から、H4K5ac, H4K12ac修飾は、セントロメア領域へのCENP-Aの取り込みに必須な修飾であると結論し、報告した(Shang et al., Nature Commun., 2016)。
|