頭蓋顔面形態は、種特異性と種内多様性という両方の性質を併せ持つ、非常に興味深い構造である。本研究課題においては、頭蓋顔面形態の種内多様性に関わる遺伝要因を明らかにすることを目的とし、遺伝学的解析を進めている。量的形質遺伝子座(QTL)解析にて3つの頭蓋顔面形質(L33、V13、D29)への関与が示唆されるゲノム領域(L33-6番染色体、V13-5番染色体、D29-15,22番染色体)を見出していたが、一昨年度の解析を通じ、22番染色体のゲノム領域は擬陽性であることが判明した。このため、残り3領域(3形質)の解析を進めた。以下にその進捗・結果を述べる。 形質L33-6番染色体:昨年度までの解析にて、6番染色体の端約5Mbpの位置が形質関連領域であることが示唆されていた。そこで、この領域を更に細かく分断したコンジェニック系統を6系統作成した。各系統の表現型解析用個体を確保し、現在、その成長を待っている段階である。これら系統の表現型解析により、形質関連領域を500kbp~1Mbp程度に絞り込む見通しである。 形質V13-5番染色体:形質への関連が示唆された領域をカバーするコンジェニック系統を用い、表現型解析を行った。その結果Hd-rRとの間に有意な差が認められ、QTL解析結果の検証に成功したかに見えた。しかし追試として同時に行った、Hd-rRとHNIの比較解析では、V13における2系統間の関係が当初とは逆転してしまった。すなわち、コントロールしきれていない何らかの環境要因がV13に関わっており、表現型が不安定になっていることが示唆された。このため、現時点では、解析不能との判断を下した。 形質D29-15番染色体:15番染色体をカバーする2つのコンジェニック系統の頭部撮影を行った。今後、撮影した画像をもとに表現型の定量化を行い、表現型解析を完了させて、QTL解析結果を検証する。
|