研究課題
進化生物学において、適応進化に貢献する遺伝子や塩基の同定、それらの適応度上昇への貢献度を定量評価することは重要である。そこで、申請者はRNAバクテリオファージQβ(Qβ)をモデルとし、野生型が増幅できない高温環境で増幅可能となる過程を追跡可能な高温適応実験進化系を構築した。独立3系列で行った進化実験のゲノム解析の結果、全系列に共通する塩基置換を含む複数の塩基置換の蓄積を明らかにした。平成26年度は高温適応実験進化系の各適応温度で独立3系列で共通して検出された塩基置換を持つ変異型Qβを作製し、各適応温度での適応度(増幅率を指標とする)を明らかにすることを目的とした。具体的には、QβのRNAゲノム全長に対するcDNAを持つプラスミドDNAに対し目的の変異を持たせたプライマーを用いてPCRを行った。得られたPCR断片をタカラバイオ株式会社のIn-Fusion cloning 法を用いて環状化した。37.2℃で検出された1箇所の変異(C2249U)、41.2℃で検出された5箇所の変異(G4A、U192C、C1257U、C2201U、C2249U)、43.6℃で検出された8箇所の変異(G4A、U192C、A1088G、C1257U、C2201U、C2249U、A2748C、U2776C)を導入したプラスミドDNAを作製した。次に、それぞれのプラスミドDNAを持つ大腸菌からそれぞれの変異を持つQβ変異体を抽出し、得られたQβ変異体を30.6℃、37.2℃、40.7℃、43.6℃で適応度を測定した。その結果、41.2℃で検出された5箇所の変異はQβの高温適応において(1)アミノ酸変化を伴わない5箇所の変異だけで41.2℃の高温適応を達成可能である。(2)43.6℃で導入された3種類の変異の適応度の貢献を正負逆にする遺伝的背景を提供するという2つの役割を持つことを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
申請書に記載した平成26年度実施予定内容を達成したため(2)とした。具体的には、高温適応変異型Qβの作製とその増幅率の評価を行った。
作製した変異型Qβの生活環のどのステップがどのように変化したのかを明らかにするため、生活環の各ステップに対して定量評価を行う予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件)
Frontiers in Microbiology
巻: 6 ページ: 124
10.3389/fmicb.2015.00124
Journal of Virology
巻: 88 ページ: 11459-11468
10.1128/JVI.01127-14
PLoS ONE
巻: 9 ページ: e98337
10.1371/journal.pone.0098337