研究課題
本年度の目標は、細胞分裂を同調化した単細胞緑藻クロレラの分裂期と成長期の細胞膜タンパク質を精製し、単細胞緑藻の細胞膜タンパク質のカタログ化と分裂に伴うそれらの量的変動を明らかにすることであり、そのために以下の課題を設定した。即ち、1)単細胞緑藻クロレラの細胞分裂を明暗周期によって同調化、2)分裂期と成長期の細胞から水性二相分配法によって細胞膜を単離、3)精製した細胞膜タンパク質の組成を微量質量分析法によって解析し、質量データをデータベースと対照かつ相対的な量比を推定、分裂期とそれ以外で比較、の3点である。1)クロレラ細胞の細胞分裂の同調化については、研究代表者らが全ゲノム解析をしているクロレラの1種P. kessleriを用いた。しかし、明暗周期では細胞分裂を同調化できなかった。そこで、近縁種であるC. sorokinianaを用いたところ同条件で分裂の同調化が認められた。明暗周期と培地を調整したところ、同調的に細胞が増殖させることができた。2)水性二相分配法はこれまでに微細藻類への適用例が殆どなく(クラミドモナスで2例)、また、どの例も細胞壁欠損株を材料としているため、細胞破砕法から検討した。その結果、フレンチプレス法によりクロレラでも完全に細胞を破砕でき、かつ、水性二相分配法で細胞膜タンパク質を分画できた。3)当初の予定では全ゲノム解析の進んでいるP.kessleriを材料とする予定であったが、上述の問題からC. sorokinianaに材料を変更したため、ゲノム情報が利用できなくなった。そのため、mRNA-Seq解析を実施し、現在、データ解析を進めている。
3: やや遅れている
研究実績の概要で述べた通り、当初は全ゲノム解析が先行しているP.kessleriを研究材料に用いていたが、細胞分裂の同調率の低さから近縁種のC. sorokinianaに材料を変更した。そのため、明暗条件や培地開発に時間を要した。また、ゲノム情報が利用できないため、新たにmRNA-Seq解析を実施しており、その情報解析に時間を要している。一方で、細胞分裂の同調化、また、細胞膜タンパク質の精製は成功している。以上から、当初予定していなかったmRNA-Seqの実施、および、当初予定していた質量分析が次年度に持ち越されたため、達成度を「(3)やや遅れている。」とした。
本年度は、(1)単細胞緑藻のセプチンと相互作用する因子を同定する。(2)同定した相互作用因子の機能を推定し、真核生物のゲノム間での保存性を明らかにする。また、(3)相互作用因子に対する新規抗体を作成し、抗体を評価する、の3点としていた。しかし、mRNA-Seqの情報処理、細胞膜タンパク質のカタログ化が遅延しているため、まず、両者を優先して進める。具体的には、mRNA-Seq解析では、mRNA情報からプロテオーム解析用データベース構築、セプチンホモログの同定、既知の細胞質分裂装置を同定することを予定している。その上で、平成26年度に精製した細胞膜タンパク質のカタログ化を実施する。また、セプチンホモロの同定後、抗体を作成し、評価を行う。評価方法は、発現および局在であり、発現は免疫ブロット法、局在は間接蛍光抗体法および免疫電顕法を用いる予定である。
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