研究課題
本研究では、植物におけるアクトミオシンリングによる環状収縮からフラグモプラストによる細胞板形成へと至る細胞質分裂の様式の大転換を明らかにすることを目的に緑藻の細胞質分裂の分子機構とその進化について研究した。本年度は、研究材料としてParachlorella kessleriのドラフトゲノム解読を行い、遺伝子予測とアノテーションを実施した。P. kessleriはトレボウクシア藻綱に属する単細胞性の微細藻類で8から16個の内性胞子を形成する。全ゲノム解析の結果、ゲノムサイズは62Mbpで予測される遺伝子の数は12,063個であった。既にゲノムが読まれているChlorella variabilisとCoccomyxa subellipsoideaと多くの遺伝子を共有していた。今回、Parachlorella kessleriに加えて、全ゲノムやドラフトゲノムが解読されているトレボウクシア藻綱に属するC. variabilisとC. subellipsoidea、プラシノ藻綱に属する微細藻類4種、緑藻綱Chlamydomonas reinhardtiiとVolvox carteri、さらに陸上植物に繋がる車軸藻綱Klebsormidium flaccidumにおけるセプチンタンパク質の存在の有無を探索した。セプチンは、GTPaseを有するタンパク質で動物と菌類の細胞質分裂の際に分裂面で重合し、二重のリングを形成する。セプチンは、細胞質分裂に関わるタンパク質の足場として機能すると考えられている。興味深いことにこれまで緑色藻類ではセプチンタンパク質は1種類だと考えらていたが、もう1種類類似したものがゲノム中に存在することがわかった。また、プラシノ藻の様に細胞壁をもたない種ではセプチンは消失していたがその他藻類では保存されていることがわかった。現在、分子系統解析等を進めている。
3: やや遅れている
本研究では、当初ゲノム解析が先行していたParachlorella kessleriを研究材料として考えていたが、細胞分裂の同調性から考えてChlorella sorokinianaに変更した。しかし、研究費の都合、C. sorokinianaのゲノム解読には至らなかった。ただし、C. sorokinianaのゲノムについては天津生物技術研究所等でゲノム解読が進んでおり、情報公開を待っている状態にある。
本年度は、セプチンの分子進化について分子系統解析等を行い、緑色藻類の進化における細胞質分裂因子の消長を明らかにする。また、特異的抗体を作成し、細胞質分裂における局在を明らかにする。また、その他のセプチンと相互作用するタンパク質についてはゲノム情報から探索し、緑色藻類に渡る分布を調査する。
バイオインフォマティクス解析に予想よりも時間が掛かった為。
当初の予定通り特異的抗体等を作成する。
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Scientific Reports
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Phycological Research
Biotechnology for Biofuels
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