研究課題
本研究では、植物におけるアクトミオシンリングによる環状収縮からフラグモプラストによる細胞板形成へと至る細胞質分裂の様式の大転換を理解することを目的に緑藻の細胞質分裂の分子機構とその進化について研究した。本年度は、これまでゲノム解析に用いていた単細胞性のトレボウクシア藻類Parachlorella kessleriのゲノム情報に加えて、当該グループで全ゲノム解読を進めている多細胞性のアオサ藻類Ulva partitaのゲノム情報、さらにプラシノ藻類や車軸藻類Klebsormidium flaccidumのゲノム情報へと調査対象を広げた。また、これまでセプチンに絞って解析を進めていたが、出芽酵母や分裂酵母で既に知られているセプチンと相互作用するタンパク質群のオルソログ、アクトミオシンリングを構成するタンパク質、またその形成に関わるタンパク質のオルソログについても調査対象を広げた。その結果、セプチンはプラシノ藻類では消失しているもののファイコプラストを介した環状収縮によって細胞質分裂を行う緑藻類・トレボウクシア藻類・アオサ藻類に高度に保存されているだけでなく、細胞板によって細胞質分裂を為す車軸藻類にもセプチンが存在することがわかった。また、セプチン相互作用因子やアクトミオシンリング構成・形成因子については緑色藻類全般に渡って特にセプチンを介してアクトミオシンリングの形成に関わる因子が完全に消失していることがわかった。これまでの研究結果から緑色植物ではその成立期に既にアクトミオシンリングの構成と形成に関わる因子が消失している一方で、その形成因子の足場となるセプチンタンパク質は保存され続けていることがわかった。これは、セプチンが新しい役割を獲得したか、これまで菌類や動物では知られていないアクトミオシンリング形成以外の役割を細胞質分裂において果たしていることを示唆している。
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RIKEN Accelerator Progress Report
巻: 49 ページ: 265