研究課題
旧北区―東洋区の境界にある生物多様性ホットスポット・ヒマラヤとその周辺域で分化したと考えられる植食性昆虫とその寄主植物について、形態による分類学的再検討および複数の遺伝子を用いた分子系統解析を行い、この地域での植食性昆虫相の遺伝的分化と形成過程を明らかにし、その分布と多様化の成立要因の解明を目的とした。また、分岐年代を伴う生物地理学的情報に地史や気候変動の情報を重ねて過去を復元することで、系統分類学や生物地理学だけでなく、ヒマラヤの古地理学や古気象学に寄与し、保全生物学への貢献も目指した。平成28年度は、予想以上に遺伝学的研究で予算を使用する状況となったため、前倒しとなっていた海外調査を諦めて分子系統解析および生物地理学的解析に専念した。研究成果として、チョウ類では主にアゲハチョウ科シボリアゲハ属の分子系統地理および形態・生態進化について日本鱗翅学会および日本蝶類学会にて発表し、前者の学会からは「最優秀賞」を受賞した。フロリダで開催された国際昆虫会議ではシジミチョウ科の特異な生態に関する発表を行った。シジミチョウ科のゼフィルス類に関する最新の生物地理学的解析から種多様度と固有地域を探索する研究でも日本鱗翅学会から「優秀賞」を受賞しており、現在、国際誌PLOS ONEに投稿中である。また、ヒマラヤ地域を含む日本とその周辺域のチョウ類と寄主植物のリストを日本生態学会誌に出版した。その他に科学系出版社の書籍でも一部の成果を出版した。ガ類では中国産トガリバ科のモノグラフを昨年に続いて国際誌Zootaxaに投稿中である。これらの成果は、研究代表者(矢後)の監修や協力で開催された「ふじのくに地球環境史ミュージアム」や「群馬県立ぐんま昆虫の森」の企画展およびその展示図録、さらには代表者が所属する「東京大学総合研究博物館」の常設展示などでも解説、図示し、本研究の公開発信を広く行った。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (3件)
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巻: 21 (3) ページ: 10-11
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