ヒマラヤ山脈とその周辺域は、動物区系分布でのヒマラヤ亜区を構成し、中~高標高域には多くの固有種(亜種)が生息することで知られる。本地域で分化したと見られる植食性昆虫とその寄主植物の集団間(種間や亜種間など)での遺伝的分化を複数領域の遺伝子マーカーによる分子系統解析を行うことで、その各集団の形成過程を調査した。ヒマラヤ域の変成帯は16-22百万年前に急激に上昇し、インドモンスーンは約10百万年頃に始まり、7-8百万年前に強化されたことが知られるが、この造山活動とそれに伴う気候変動が各集団間の分化に大きな影響を与えた可能性が高いことが判明した。また、いくつかのグループでは分類学的再検討も行った。
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