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2014 年度 実施状況報告書

視覚の適応が創出する種の多様性

研究課題

研究課題/領域番号 26440209
研究機関総合研究大学院大学

研究代表者

寺井 洋平  総合研究大学院大学, その他の研究科, 助教 (30432016)

研究分担者 藤村 衡至  新潟大学, 自然科学系, 助教 (90722140)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード種分化 / 生態適応 / 視覚 / 配偶者選択 / シクリッド / アノール / ノトセニア
研究実績の概要

本研究では生態適応による種分化の機構がどの程度一般性があるか、アノールトカゲの森林内部への視覚の適応と、南極の氷魚の氷棚の下への視覚の適応を視物質の測定により明らかにする。またシクリッドでは視覚遺伝子変異体を作製し、その遺伝子が生殖的隔離の責任遺伝子であるか明らかにする。これらの研究により、生態適応による種分化機構の生物多様性の創出における一般性を明らかにすることを本研究の目的としている。
平成26年度、アノールについてはキューバに野外調査に行き森林内部と開けた場所での光スペクトルを測定した。この測定により開けた場所では紫外線から可視光、赤外線までの幅広い光が届いているが、森林内部では長波長よりの波長が主に存在していることが明らかになった。これは長波長を吸収するオプシン遺伝子(LWS)の変異が森林内部に生息する種で置換があることと一致していた。また、森林内部と開けた場所に生息する種のオスの喉の色の反射スペクトルについても測定を行った。現在視物質の吸収を測定する実験を行っているが、この吸収と光環境、喉の色の反射スペクトルを解析することによって、生殖的隔離との関連を明らかにできると期待している。南極に生息する氷魚については、氷の棚の下に生息する種とその種に近縁で氷の棚の下には生息しない種からオプシンタンパク質の産生を行った。こちらも現在視物質の吸収を測定する実験を行っている。シクリッドについては種間で分化した2つ目のオプシン遺伝子を特定した。そのうちの1つLWSオプシンの変異体を作製するために当初のTALENから変更してCRISPR-Cas9のベクターを購入した。現在変異体作製のプラスミドを作製している。また、変異体の作製にはシクリッドへのインジェクションが必須となるが、こちらは分担者(藤村)によって準備が進められた。平成27年度には変異体作製を進めることができる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は順調に進展していると考えている。その理由を以下に挙げる。
アノールについては、最も困難が予想されたキューバにおける野外での光環境測定を行うことができたことが大きな成果であった。LWSについては視物質の測定の直前まで進めることができたが、視物質の吸収の測定にはいたらなかった。しかし、平成27年度には測定ができ、またアノールの喉の色の反射スペクトル測定も行っているので、測定が終わり次第解析が可能となっている。視物質の吸収と光環境、喉の色の反射スペクトルを解析することによって、生殖的隔離との関連を明らかにできると期待している。南極に生息する氷魚についても、氷の棚の下に生息する種とその種に近縁で氷の棚の下には生息しない種からの視物質の測定の直前まで進めることができた。こちら種の場合はDNAの状態(質)があまり良くなく、実験を進めるのが困難であったが、視物質発現用のプラスミドを完成させることができた。平成27年度には測定ができる予定である。シクリッドの視覚遺伝子の変異体については当初の計画から作成方法を変更してCRISPR-Cas9のベクターに切り換えたため、準備に少し時間を要した。しかし、それ以外はインジェクションの準備、魚の準備などを含めて順調に進展してる。以上のことから、本研究は順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

アノールについては視物質の吸収を測定する実験を行い、この吸収と光環境、喉の色の反射スペクトルを解析することによって、生態適応を介した生殖的隔離の機構を明らかにする予定である。南極に生息する氷魚については、も視物質の吸収を測定を行い、氷の下の光環境への適応と近縁種からの遺伝的交流の断絶の過程を解析する予定である。シクリッドの種間の変異体については、平成27年度にオプシンの変異体の作製を行い、平成28にその変異体が配偶者選択を野生型と同等に行うことができないかどうかを行動実験により示し、オプシン遺伝子の配偶者選択における役割と種分化の機構を明らかにする予定である。また、アノールと氷魚については、平成27年度中に論文の作製を始める予定である。

次年度使用額が生じた理由

分担者(藤村)の分担金は、シクリッドへのインジェクション実験のための費用であるが、インジェクションを行う予定が平成27年度となったため、こちらの経費を平成27年度に使用することとなったため。

次年度使用額の使用計画

平成27年度にシクリッドのインジェクション実験用の費用として使用する予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2014 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] High prevalence of non-synonymous substitutions in mtDNA of cichlid fishes from Lake Victoria.2014

    • 著者名/発表者名
      Shirai K, Inomata N, Mizoiri S, Aibara M, Terai Y, Okada N, Tachida H.
    • 雑誌名

      Gene

      巻: 552 ページ: 239-245

    • DOI

      10.1016/j.gene.2014.09.039

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Sensory drive speciation and patterns of variation at selectively neutral genes.2014

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto T, Terai Y, Okada N, Tachida H.
    • 雑誌名

      Evolutionary Ecology

      巻: 28 ページ: 591-609

    • DOI

      10.​1007/​s10682-014-9697-8

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Construction of chromosome markers from the Lake Victoria cichlid Paralabidochromis chilotes and their application to comparative mapping2014

    • 著者名/発表者名
      Kuroiwa A, Terai Y, Kobayashi N, Yoshida K, Suzuki M, Nakanishi A, Matsuda Y, Watanabeb M, Okada N.
    • 雑誌名

      Cytogenet. Genome Res

      巻: 142 ページ: 112-120

    • DOI

      10.1159/000356128

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Genomic islands: 種分化の際にゲノムに出現する種形成の責任領域2014

    • 著者名/発表者名
      寺井洋平
    • 学会等名
      日本魚類学会年会
    • 発表場所
      小田原
    • 年月日
      2014-11-14 – 2014-11-17
    • 招待講演
  • [学会発表] 陸上、水中、氷の下、視覚の多様化が創出する種の多様性2014

    • 著者名/発表者名
      寺井洋平
    • 学会等名
      日本進化学会 第16回大会
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      2014-08-21 – 2014-08-24
    • 招待講演
  • [図書] 視覚の認知生態学 生物たちが見る世界」(牧野、安元編)(文一総合出版)2014

    • 著者名/発表者名
      寺井洋平
    • 総ページ数
      20
    • 出版者
      環境が生み出す新しい種:光環境への適応がもたらすシクリッドの種分化
  • [備考] 適応と種分化の研究の紹介

    • URL

      http://adaptive-speciation.com

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公開日: 2016-05-27  

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