研究課題/領域番号 |
26440213
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森 哲 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80271005)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | へビ類 / 餌毒 / 防御機構 / 進化 / 頸腺 / 国際研究者交流 |
研究実績の概要 |
本年度はマレーシア領ボルネオおよびスリランカに渡航し、ヘビ類の採集、防御行動の実験、および、頸腺成分の採取を行った。また、中国の研究協力者の助力を得て、中国固有種の防御行動や頸腺成分の採取も行った。特に中国においてはミミズ食の種を主な対象とし、これらの種の頸腺成分の特定や、餌として食べたミミズからの毒の取り入れの可能性を検証する実験を実施した。また、頸部だけでなく胴体全体の背面に毒腺を持っているとされている種を中国およびスリランカから採集し、それらの防御行動を調べ、その後、解剖することによって、毒腺の詳細な形態の観察を行った。 化学分析を専門とする研究協力者を京都大学農学研究科に新たに得たことから、採取した毒成分の分析は京都大学にて実施した。その結果、ミミズ食の種もヒキガエル食の種と同様の毒成分であるブファジエノライド類を持っていること、しかしながら、その微細構造は両者で異なること、さらに、分子量の極めて大きいブファジエノライド類がミミズ食の種に特有に存在することが明らかになった。 各国で採集されたヘビからは分子遺伝学的解析用のDNAサンプルも採取し、ミトコンドリアDNAのチトクロームb領域と核DNAのc-mosの塩基配列を合わせてこれらの分子系統樹を推定した。その結果、ミミズ食の種はヒキガエル食の種から進化してきたこと、頸腺の二次的な消失が複数回行った可能性があること、胴体全体への毒腺の延長も複数回進化した可能性があることなどが示唆された。 2014年2月にスリランカを訪問した際には、本プロジェクトの共同研究者がアメリカ、マレーシア、台湾、中国、ベトナムから集ってワークショップを開催し、各々のこれまでの成果を発表して情報交換をするとともに、今後の研究方針や新たな展望についての活発な議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マレーシア半島に分布する種を採集するための調査許可の取得に予想外の時間がかかっているため、予定よりも若干の遅れがあるものの、それ以外は概ね計画通りに進んでいる
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今後の研究の推進方策 |
前年度からの継続として、関係種全種の分子系統樹の作成と頚腺に関連した形質の相関進化の実態の解明を継続する。頸腺を持たないと記載されている中国産の種や、近年に中国から新種記載された種の採集にも努める。また、マレーシア半島での調査許可を取得して、ハブモドキ属の採集を実現し、それらの毒成分や頸腺の形態、系統学的位置付けの解明を目指す。さらに、スリランカ固有種のハナカガシや、台湾固有種のスウィンホニヤマカガシのサンプル数を増やし、頸腺の微小進化解明につながるデータを補強する。 毒成分の分析をさらに進め、様々な種における毒成分の比較を行えるデータを集積する。また、ミミズ食の種で検出された分子量の大きいブファジエノライドの構造決定を試みる。さらに、ミミズから毒成分を得ているかどうかを検証する実験を継続し、ミミズ食のヘビが持つ毒の由来を解明する。 QTLマッピング法による頚腺形成に関わる遺伝子の特定の準備にも取りかかる。これを行うための妊娠メスを野外で採集し、飼育下で産卵させ、胚の頚腺部分と頚腺以外の組織からのRNAの抽出や、cDNAへの逆転写反応などの過程の予備的作業を行う。 8月にオーストラリアで開催予定の国際動物行動学会議をはじめ、各関係学会で研究成果を発表するとともに、論文の執筆を進める。また、予定通りに採集が進んでいない種がある場合は、代替になりうる国(インドやタイ)を検討し、新たな海外共同研究者の参画を勧誘する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マレーシア半島に分布する種を採集するための調査許可の取得に予想外の時間がかかっているため、本地域での調査が行えなかった。そのため、マレーシア半島での調査分として計上していた予算を執行しなかったため、繰越金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
調査許可を取得次第、マレーシア半島での調査経費として使用する。
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