研究課題
本年度は中国へ2回渡航し、イツウロコヤマカガシの頚腺毒の成分がホタルに由来していることを確かめるために、以下の実験、分析を実施した。まず、中国産の6種のホタルの化学分析を行い、マドボタル亜科の2種が本種の頸腺成分と同様の高分子ブファジエノライドを持つことを確かめた。次に、飼育下において本種がマドボタル亜科の1種を捕食することを確認した。さらに、野外で採集したイツウロコヤマカガシの消化管内容物からマドボタル亜科の別種を検出した。一方、8月に杭州で開催された第8回世界爬虫両棲類会議においてシンポジウムを企画し、本研究成果を世界の当該研究者に広く公表した。さらに会議後には、本プロジェクトメンバーによる第3回ワークショップを行い、これまでの成果の内容を共同研究者の間で共有するとともに、今後のプロジェクトの推進方策について協議した。10月から11月にかけてはインドネシア科学院生物学研究センターを訪問し、共同研究の開始を確約した。また、ボゴール動物学博物館に保存されている標本を解剖し、ハブモドキ属を含む数種の頸腺の形態の詳細な観察を行った。12月にはスリランカのスリ・ジャヤワルダナプラ大学を訪問し、固有種の頸腺の詳細な観察、学生へ向けての研究内容の紹介、共同研究の今後の打ち合わせを行った。また。スリランカ産の対象種の頸腺液サンプルを持ち帰り、化学分析を行って、これらの種もブファジエノライドを持つことを確認した。3年間の補助事業期間を通して、頸腺システムの多様性の存在と進化過程をさらに詳しく解明することができた。特に、ミミズ食のヤマカガシ類において、ブファジエノライドの源をヒキガエルからホタルに移行させる進化が起きているという予想もしなかった事実が発見された。今後はこの毒源の移行がどのようなメカニズムや過程で生じて、進化してきたのかをさらに追求していく予定である。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 7件)
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