前年度に引き続き、アケビ属のアケビとミツバアケビ、およびその雑種とされるゴヨウアケビの花の匂いの捕集、訪花昆虫の観察、およびDNA解析を行った。その結果、極微量ではあるが、両親種(アケビ、ゴヨウアケビ)の匂い物質としては検出されていない物質が、ゴヨウアケビから新たに検出された。すでに一部のゴヨウアケビでのみ見られた匂い物質については模造花をもちいた昆虫の誘引試験を行った。アケビ属はつる性で樹木に絡みついて比較的高い位置まで伸びていくので、今年度はそれを模して日当たりの良い林縁において地上1m付近と地上3m付近で訪花昆虫の違いを検討した。地上3m付近のほうが個体数としては1m付近より比較的多くの昆虫が訪花していた。また、試験の際の匂い物質の量については実際の花から検出された量と同程度に調整した場合はほとんど昆虫が誘引されず、量を増やすと昆虫が誘引された。 また、ショウブ属についても新たな集団においてこれまで同様に匂いの捕集やDNA解析、訪花昆虫の観察を行った。匂いに関してはこれまでと同様の結果が得られた。訪花昆虫についてはセキショウではほとんど訪花昆虫が観察されなかった。実際、観察した個体の自然状態での結実率は低かった。ただし、集団内にはそれなりの果実の発達が見られる個体もあったので、観察範囲を広げる必要がある。開花期の違うセキショウ集団間の人工交配を試みたが、現時点で成功していない。また、すでに採集した北アメリカ産ヒメタイサンボクの葉の精油成分については個体差が大きく、交雑個体の特徴を特定するに至っていないので、さらなる解析を進めている。
|