研究課題/領域番号 |
26440216
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
古屋 秀隆 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20314354)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ニハイチュウ / 片利共生 / 形態適応 / 頭足類 / 分子系統 |
研究実績の概要 |
ニハイチュウ(二胚動物門)は、底棲の頭足類の腎嚢に片利共生する体長数ミリの多細胞動物で、その単純な体制は頭足類の腎嚢という特殊な微小環境へ適応の結果であると考えられる。この動物の分類形質における形態適応と進化について、形態学的手法と分子系統学的手法を用いて解析を進めている。可能な限り多くの種を集め、適応形態の多様性を明らかにし、進化の道筋を解明することを目指している。 当該年度は、日本海沿岸のクモダコ、熊野灘に生息するツノモチダコ、ヤワラボウズイカ、ウデボソコウイカ、テナガコウイカ、イッカクダコ、マダコ属のタコ類2種、および土佐湾からマダコ属のタコ類1種から、約20種のニハイチュウ類を採集することができた。このうち18種類は分類形質を明らかにした結果、新種であることが判明したので、新種記載の準備を進めている。同時に、これらニハイチュウ類のミトコンドリアCOI遺伝子と18SrRNAの塩基配列を解析中である。 また、ツノモチダコとイッカクダコにみられるニハイチュウ類から、それぞれ他にはみられない特異な適応形態をもつ種が発見できた。クモダコにみられる1種は、体の前部を他の同種個体と融合させ生息域を大きく覆う特徴をもち、ツノモチダコにみられる1種は、体の前部を他の同種個体と接着させ群体を形成し、生息域を大きく覆う特徴をもつ。これは1つの適応戦略と考えられる。 さらに、海外のニハイチュウ類についても同様に解析を進めている。フランスとメキシコの共同研究者と、地中海とメキシコ近海に生息する頭足類にみられるニハイチュウ類について、分類学的研究と分子系統学的手法を用いて解析を進めている。これまで地中海産のイチレツダコのニハイチュウ類の再記載とミトコンドリアCOI遺伝子と18SrRNAの塩基配列を解析した。メキシコ湾沿岸のOctopus mayaから2種の新種ニハイチュウを記載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本海沿岸の頭足類(クモダコ、ツノモチダコ、ヤワラボウズイカ、ウデボソコウイカ、テナガコウイカ、イッカクダコ、マダコ属タコ類3種)が期待通りに入手でき、それら宿主から、少なくとも20種のニハイチュウ類のサンプルが採集できたから。
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今後の研究の推進方策 |
サンプリングした約20種のニハイチュウ類をについて、このうち18種類は新種であることが判明したので、新種記載を行なう。同時に、これらニハイチュウ類のミトコンドリアCOI遺伝子と18SrRNAの塩基配列を決定し、これまでに解析済みの種を含めて系統解析を行ない、注目する分類形質が、頭足類の腎嚢内という微小環境の中で、どう適応進化してきたか、ニハイチュウ相互の関係や頭足類の種分化と考え合わせ検討する。同時にさらにサンプリングを進め、可能な限り多くの種を集め、解析の精度を増したい。また、はじめて観察された同種他個体との融合や接着といった特異な適応現象についても、その形成過程を明らかにし、他の種との競争の実際をとらえたい。
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