研究課題/領域番号 |
26440217
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
羽生田 岳昭 神戸大学, 学内共同利用施設等, 助教 (40379334)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大型漂着物 / 東日本大震災 |
研究実績の概要 |
東日本大震災時の津波の影響により、数百万トンもの大量のがれきが太平洋上に流出したと推定されており、そのうち数十万トンが北米西海岸の沿岸域に漂着すると予想されている。そうした漂流物は、多額の撤去費用が問題となることはもちろん、それらに付着した東北地方原産の海洋生物が外来種となり、現地の生態系に悪影響を与える可能性が高いという点でも大きな問題である。 本研究では、分子系統学的な手法を用いて、北米西海岸の大型漂着物に着生する海藻類の遺伝的同定を行うとともに、周辺海岸の海藻相のモニタリング調査を行うことにより、外来種の早期発見や対処を可能にする他、現地生態系への影響を考察することを目的としている。また、漂着物に着生した海藻類や漂着先の生態系に侵入した海藻類の迅速かつ正確な同定を可能にするため、DNAバーコード情報の蓄積を行った。 平成26年度は、北米西海岸の大型漂着物に着生していた約100種類の海藻類を入手し、核コードのITS領域、葉緑体ゲノムコードのrbcL遺伝子やpsbC遺伝子、ミトコンドリアゲノムコードのcox1遺伝子やcox3遺伝子の塩基配列をもとに種の同定を行った。その中には、マコンブ、オオバツノマタ、アカバ、ウルシグサなど北米西海岸での分布が確認されていない種が含まれており、新たな外来種となる危険性が示唆された。また、セイヨウハバノリやダルスなど、東北太平洋沿岸と北米西海岸の両方で分布が確認されている種についても、地理的に離れた集団では遺伝的なギャップがあることが示唆され、新たな外来種の侵入の指標としてこれらの種が利用できる可能性が示唆された。この他、東北太平洋沿岸で約200個体の海藻サンプルを入手しDNAバーコード情報の蓄積を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北米西海岸の大型漂着物に着生していた120個体以上の海藻類を入手し、そのうち約100個体について既に遺伝的同定を終えている。また、国内における海藻類のDNAバーコード情報の蓄積に関しても、東北太平洋沿岸において約200個体のサンプルを採集し、塩基配列情報の蓄積を進めている。 得られた情報から、いくつかの種が北米西海岸への新たな外来種の侵入を早期に発見する為の指標として利用可能であることも示唆されてきており、本研究は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度に入ってからもまだ新たな漂着物が確認されていることから、それらに着生していた海藻類の入手と遺伝的同定を進めると共に、日本由来の外来種の早期発見の為の指標となる種の選定を進める。また、漂着物に着生した海藻類や漂着先の生態系に侵入した海藻類の迅速かつ正確な同定を可能にするため、更にDNAバーコード情報の蓄積を進める。
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