ビロウは、琉球・薩南諸島に分布するヤシ科植物であるが、九州北部や四国南西部など、分布の中心から離れた島嶼部にも隔離的な分布が見られる。こうした隔離分布について、遺存種仮説や海流散布仮説が提唱されているが、ビロウが自生しない本州においてもビロウは宮中の祭祀において重要な役割を果たしてきたことから、古代琉球とヤマトの文化交流の結果、九州・四国に持ち込まれ定着したとする説もある。本申請課題では、隔離ビロウ集団の起源解明を目的に、分布域全域を網羅した集団遺伝学的解析を行った。その結果、分布域北端に位置する九州北部の隔離集団については海流散布では説明がつかず、人為起源の可能性が高いことが明らかとなった。
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