研究課題/領域番号 |
26440221
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
細石 真吾 九州大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (80571273)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 形態進化 / 分子系統 |
研究実績の概要 |
シリアゲアリ属の地下性1種の新鮮なサンプルをシンガポールでの野外調査で採集した。DNAを抽出してシーケンスを行い、部分的ではあるが核遺伝子領域の塩基配列の一部を決定した。地下性種を含むアジア産キイロシリアゲアリ亜属27種について、形態形質を用いた系統解析を行い、10新種を確認した。東南アジアにおける生物地理学的考察を行い、アジア産キイロシリアゲアリ亜属が比較的若い分類群であることが明らかになった。以上の解析から、地下性種は異なる系統で独立して複眼の退化が生じていることが明らかになった。それらの結果は国際学術誌であるZoological Journal of the Linnean Societyに掲載された。 アジアアリ類研究者ネットワークの国際学会に参加し、「Annual fire resilience of ground-dwelling ant communities in Hiraodai Karst Plateau grassland, Japan」について口頭発表を行った。また、日本昆虫学会第75回大会では「アジア産キイロシリアゲアリ亜属の形態系統解析と生物地理」について口頭発表を行い、日本昆虫学会第76回合同大会では「マカランガ共生アリと類似したシリアゲアリ類の系統的位置・形質進化」について口頭発表を行った。形態形質を用いた系統解析や分子系統解析、分岐年代推定、地質学的スケールでの生物地理と種分化を考察しており、地下性シリアゲアリ類の研究にも適用していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シンガポールで地下性種のC. myopsを大量に採集することができ、DNA抽出からシーケンスまで順調に研究が進んでいる。 非常に稀な一部の種については新鮮な状態のサンプル入手が難しいが、断片的なシーケンスで補助的に解析していく予定である。 研究成果の発表は学会発表(3回)や論文投稿(2本受理、1本投稿)を行っており、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
シンガポールで採集したC. myopsの系統的位置をシリアゲアリ属全体での系統樹と合わせて解析し、その位置を決定する。また、カンボジアで採集した地下性種の分子系統解析も行う。乾燥標本を用いた解析も補助的に行い、それらの系統的位置を決定する。頭部の解剖により大あごの比較を行い、それらの地下性種が示す形態進化を明らかにする。新鮮なサンプルから消化系内容物のシーケンスも行い、専門的に何を捕食しているかをデータベース上の配列情報と合わせて明らかにする。 以上の結果を学会で発表し、生活史を専門とした国際学術誌に論文投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、欧米の自然史博物館を訪問して新鮮なサンプルを探して借りる予定であったが、シンガポール調査中に新鮮なサンプルを大量に入手することができた。また、シンガポールの博物館にも新鮮なサンプルが保管されており、アジア各国の博物館にある新鮮なサンプルを入手するのも効率的であることが明らかになった。
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次年度使用額の使用計画 |
今後は欧米だけでなくアジア地域の博物館に連絡をとり、サンプルの保管状況を確認した上で博物館を訪問したいと考えている。シンガポールやタイ、マレーシアの博物館を訪問先の候補として考えている。
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