シンガポールにおける野外調査で得られた地下性シリアゲアリ類の形態観察を行った。生物顕微鏡を用いた口器形態の観察から、地下生活に関連していると思われる形態形質を確認することができた。触角表面に分布する感覚子が地下性種ではより発達していることが明らかになった。系統解析で得られた姉妹種との比較の結果、口器以外にも体表面の微細構造や体毛の発達状態に特殊化したと思われる形態を確認することができた。インドシナ半島で採集された特異な形態を持つ種について、核遺伝子の複数領域を用いた系統解析を異なった基準(最節約法・ベイズ法・最尤法)で比較して決定し、分岐年代推定と地質年代スケールでの生物地理を考察した論文がEuropean Journal of Taxonomyに受理された。また、インドシナ半島で発見された未記載種の分類・系統・生物地理・形質進化に関する論文がAnnals of the Entomological Society of Americaに掲載された。 第59回日本蟻類研究会大会においては、東南アジアに広域分布するC. ferrariiの系統地理学的研究の成果を口頭発表した。ハプロタイプネットワーク解析を行い、インドシナ半島におけるレフュージアの可能性について考察した。日本分類学会連合第16回公開シンポジウムにおいては、これまで熱帯アジアで行ってきたシリアゲアリ属の分類・系統・形態・生物地理の研究成果を口頭発表した。
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