研究課題/領域番号 |
26440222
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
山本 真紀 専修大学, 商学部, 准教授 (80361616)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 藻類 / トレボキシア藻 / 細胞分裂 / 細胞壁 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、トレボキシア藻綱カワノリ目内の単細胞から糸状体、葉状体への発達過程を明らかにすることである。カワノリ目Stichococcus属には、単細胞株と糸状体形成株が存在する。初年度は、Stichococcus sp. Handa-1755-a株、Stichococcus bacillaris Handa-786-x株、Stichococcus bacillaris NIES-529株の3株の比較観察を行い、以下の結果を得た。 1.1755-a株は対数増殖期と定常期を通じて常に単細胞だが、529株は常に糸状体と単細胞が混在していた。一方、786-x株は対数増殖期には糸状体が伸長したが、定常期には断片化し、単細胞に戻った。そこで、786-x株について、短期間の植継ぎを繰り返して対数増殖状態を保ったところ、百数十個もの細胞が連なる長い糸状体を形成する結果となった。 2.1755-a株はマンノース結合型レクチンConAの蛍光が観察されないのに対し、786-x株と529株は強い蛍光が分裂面に観察された。マンノシダーゼ処理を施すと、ConAの蛍光は消失するが、糸状体には変化がなかった。ペクトリアーゼ・マセロザイム処理により786-x株と529株はどちらも糸状体が断片化し、単細胞状態となった。 これらの結果から、786-x株の糸状体は単に娘細胞の解離の遅れによって生じるが、529株ではより高次の細胞連結のしくみが備わっている可能性がある。1つの属内で糸状体形成のしくみに変化が生じていることが示唆された。また、786-x株と529株の分裂面にはマンノースやペクチンなどの数種類の糖が局在しており、このような細胞壁成分の株ごとの違いが、糸状体形成の有無に影響を及ぼしている可能性が示唆された。そこで、3株の細胞壁成分の差異とそれらの合成関連酵素の同定を進めるための大量培養を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糸状体形成株786-x株と529株の比較から、1つの属内でも糸状体形成の機構は必ずしも同一でない可能性や、マンノースに加えてペクチンが糸状体形成に直接的に影響を及ぼしている可能性など、新しい知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究立案当初はマンノースの局在のみに着眼していたが、26年度の研究結果からペクチンの重要性も示唆された。そこで、ホモガラクツロナン、ラムノガラクツロナンⅠ、Ⅱ、などのペクチン関連のモノクローナル抗体を入手し、分裂面に局在するペクチンの構成の株による違いを調べる。さらに、これらのペクチン合成関連酵素遺伝子のホモログを探索し、対数増殖期と定常期の発現の差異を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
試料急速凍結装置の機種の選定が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
免疫電子顕微鏡観察用の試料急速凍結装置を購入する。その他、試薬・消耗品に使用する。
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