トレボキシア藻綱カワノリ目内には単細胞の他に、糸状体、細胞塊、偽柔組織、葉状体といった多細胞化への様々な発達段階の種が存在する。本研究の目的は、カワノリ目の単細胞から多細胞体への発達過程を明らかにすることである。マンノース結合型レクチンConA染色の蛍光観察から、糸状体形成株Stichococcus bacillaris Handa-786-xには、細胞連結面にマンノースが局在する可能性が示されたが、マンノシダーゼ処理には影響を受けず、糸状体は断片化しなかった。マセロザイム・ペクトリアーゼ処理により断片化することと、未固定の細胞に対する抗アラビノガラクタンタンパク質抗体の分裂面特異的蛍光から、糸状体形成にはむしろペクチン成分の関与が示唆された。一方、同じ糸状体形成株であるStichococcus bacillaris NIES-529や細胞塊形成株Prasiolopsis ramosaでは、マセロザイム・ペクトリアーゼ処理への反応性は薄く、単細胞から糸状体形成、細胞塊形成への道筋は単一ではないと考えられる。 現在、単細胞株と糸状体形成株の細胞サイズと糸状体形成率、頻回の植え継ぎによる糸状体伸長化と機械刺激による断片化、ConAの蛍光染色、マセロザイム・ペクトリアーゼ処理のデータを補完し、投稿準備中である。
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